第7章 柱《参》✔
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「ごめんねぇッ蛍ぢゃんッ!」
「も、もういいよ。蜜璃ちゃんは悪くないから」
「でもォ…!」
すっかり馴染んだ藤の檻。
その外から涙混じりに謝る蜜璃ちゃんを宥めるのは、これで何度目か。
優に二桁は越えてる…なのに一向に落ち着く気配がない。
でももう三日目だけど。
もういい加減それ以上涙流したら、その綺麗なおめめも一緒に流れちゃうから。
「悪いと言うなら、休憩を支持した俺の責任だ。それ以上自分を責めるな」
「と、冨岡ひゃん…」
ぼろぼろと涙を流し続ける蜜璃ちゃんに義勇さんの声が掛かる。
よかった、迎えに来てくれたんだ。
時透無一郎という霞柱の少年に、鬼であることを身バレされて早三日。
私はあれ以来、檻の外に出ていない。
この鬼殺隊本部には柱以外の隊士が沢山いる。
その一般隊士にバレてしまった為、出歩くことを義勇さんが一時禁止したからだ。
三日前。
あの待機所の凍った空気の中で、周りの動揺を鎮めながらしっかり隠さん達に釘を指し、時透無一郎にもそれ以上手を出さないようにしてくれた。
その義勇さんの存在がなかったら、どうなっていたことか。
本当に私はあの霞柱の少年に鬼として退治されていたかもしれない。
それでなくとも隠の人達の声が広がり此処での居場所を失っていたかもしれない。
それを思えば、義勇さんの指示は聞いておいた方がいいとわかる。
だから尚更、何もできなかったと蜜璃ちゃんが罪悪感を覚えて毎日こうして謝ってくるんだ。
その度に義勇さんが蜜璃ちゃんを引っ張って帰っていく。その繰り返し。
やっぱり義勇さんは、不器用な人だけど面倒見良い気がするな…。
「義勇さん、蜜璃ちゃんをお願いします」
正確な時間はわからないけど、もう窓の外の夕陽は落ちかけてる。
そろそろ晩御飯の時間だろうし、連れて帰ってもらわないと。
そう意味を込めて檻の奥から頭を下げる。
藤の花で飾られている格子には近付けないから。
…あ。それと。
「今日も杏寿郎には上手く伝えておいて貰えると」
助かるので、と。
頼もうとした声より早くそれが遮った。
「夜分に邪魔する! こんばんは!!」
叫ぶような大音量で、夜の挨拶を飛ばしてくる声と。
わあ…予想より来るのが随分早い。