第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし
荒い息遣いが耳をなぶる。
かと思えば柔い肌を狙うように、首筋に熱い痛みを感じた。
「あァ…! つぅ…!」
鬼とは違う牙無き牙が、蛍の頸に突き立てられていた。
己の所有物だと示すかのように、肌を押し込み跡を残していく。
痛みが、熱い。
その熱さに感化されるように、快楽の波が増した。
「杏じゅ…ッンン…!」
ひとつ、ゆれては。
ふたつに濡らし。
「ハァ…ッく…蛍…っ」
みっつ、喘いで。
よっつに弾ける。
いつつ、果てようとも尽きることはない。
「ァ…ッあ…愛、して…っ…」
「っああ…俺もだ」
汗ばむ肌が重なり、交じり合う。
裸に剥いた想いを、繋ぎ合う。
そこに不純なものなど一切ありはしない。
男と女。
人間と鬼。
杏寿郎と蛍。
「──愛してる」
世界に在るのは、ただふたりだけ。
それ以上のものなど、何もない。