第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし
「まだ……ゃ…」
「や?」
「い、ちゃ…」
「いく?…気をやるのか?」
浅くも熱い吐息を零す蛍は、杏寿郎に縋りついたまま弱々しく告げた。
胸を上下させ早急に繰り返す呼吸は、絶頂の余韻だけではないことに気付く。
「蛍」
「ッン…!」
汗ばむ頬に張り付く髪を指で拭い、覗き見る。
それだけでしっとりと濡れた体は過敏に震え、高い声を上げた。
「──ッ」
びく、びく、と蛍の白い裸体が戦慄く。
杏寿郎の動きはもう止まっている。
責めの姿勢には入っていないにしても、蛍には抗えなかった。
(なん、で。こんな)
ただひとつになっているだけだ。
体の最奥に愛しいひとの熱を感じて、共に溶け合っているだけだ。
それがこんなにも心地良く、心身全てを溺れさせていくのか。
「見な…で…っ」
目を見開き見下ろしてくる杏寿郎の視線を、痛い程に感じる。
湯気が出そうな程の羞恥と、尚も求めたくなる快楽の狭間で、蛍は辛うじて理性を取った。
胸元に弱々しく手を当て顔を背ければ、ぐいと強い力で戻される。
頬を両手で鷲掴み、己へと向けた杏寿郎が雄の眼で見つめていた。
「無理だ。目を離していたくない」
「…ぁ…っ」
「蛍」
「ッンぁ…っ」
触れ合いそうな距離で、ほろりと熱を灯すように呼ぶ。
それだけで蜜壺の中はうねり、尚も精を絞り上げようと締め付けてくる。
「よもや…ここまで感じてくれるとは…」
「なか…きもちいい、の…止まらな…っ」
「…大丈夫だ。何も可笑しなことはない」
亀頭にぴたりと吸い付いているのは、すっかり解けて開いた蛍の子宮口だ。
荒々しく抱いた際に、ポルチオへの快感は既に植え付けていた。
体だけで堕とした快楽の海に、優しく甘く導いた結果、心までも溺れたのか。
そう結論付けても、自然と杏寿郎の口角は上がり視線は蛍の細部まで見落とすまいと巡る。
「蛍が、何より俺を求めてくれている証だ」
そんな蛍が、愛おしくて愛おしくて仕方がない。