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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし



 熱い舌が、蜜口を溶かすように食み、味わい、潜り込んでくる。
 溢れる唾液と愛液と混ぜ合わせ、音を立てて吸われれば腰が自然とひきついた。


「ぁ…んっそこ、汚い…っ」

「汚いものか。俺の精も全て喰らい尽くしている」

「え…? そうな…ふ、ァっ」


 蛍自身は気付いていないのか。杏寿郎の舌遣いに翻弄されながらも、疑問の声を上げる。
 それでも熱は燻り残っているのだろう。甘い嬌声を上げる蛍に、杏寿郎は畳に伏せている己の着物に手を伸ばした。

 通和散とは別の、もう一つ用意していた代物がある。
 それを使えば、蛍を更なる快楽の渦に落とせるだろう。
 着物の中を探れば、小さなそれを程なくして見つけた。

 その間にも舌での愛撫は止めない。
 指の腹でそっと皮を剥けば、主張する小さな肉の芽。
 味わうように下からゆっくりと舐め上げると、ひくつく腰が尚震えた。


「ンあ…ッ」


 嬌声の震えも大きく変わる。
 その反応が見たいが為に、舌全体で舐め上げては、舌先で小刻みに刺激を与え、時折吸い付いていく。


「はッきゃぅ…っアッ」


 子猫のように鳴く蛍の声が、耳に甘い。
 その声がもっと聴きたくて、もっと乱れて欲しくて。着物の下に隠した代物を引き寄せようとした。


「も、だ…ッ」

「駄目、か?」


 秘部を目の前に曝け出していることに羞恥があるのか。いつもここを口で愛撫すれば、いやいやと赤い顔で頸を横に振る。
 そんな蛍が、聞き慣れた否定の言葉を途中で呑み込んだ。

 濡れた瞳を向けて、伸びた手が杏寿郎の髪に触れる。


「だめ…じゃ、ない」


 初めて聞いた言葉だった。


「杏寿郎に、触れられるの…ぜんぶ、嬉しい、から」


 羞恥によるものか、顔は赤いまま。それでも蛍は濡れた瞳を細めてはにかんだ。


「ちゃんと、視えてるから。ぜんぶ、うれしい」


 鮮やかな緋色の瞳が、果実のように濡れ光る。
 濡れては光り、ぽたりと落ちる。
 それは甘い蜜を落としたように、杏寿郎の胸に広がり浸透させた。

 甘くて、熱くて、言葉にもならない。


「ぜんぶ、きもちいい」


 恥ずかしがりな蛍を、ここまで洗い浚いにさせているのは自分なのだと思うと。

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