第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし
今すぐその場で抱き潰したくなる衝動を堪えて、ごくりと嚥下する。
有無言わさず我が物にしたい欲はあるが、今までにない程に心は充足感で溢れてもいる。
無理矢理に鳴かせてしまったからこそ、とことん愛し尽くしたい想いも混在していた。
「ならば、めいいっぱい気持ちよくなってもらわなければな」
「ん…っあ?」
告げた杏寿郎の顔が、なだらかな肌の丘を下りていく。
辿り着いたのは、散々に苛め抜いた秘部の入口。
太腿を抱いて割り入ると、あんなにも苛め抜いた蜜の入口はしっとりと濡れる程度で治まっていた。
(? もしや…)
「そ、そんなに見ない…んぅっ」
ゆっくりと中指で秘部をなぞり上げて、挿入を試みる。
第一関節まで温かな蜜壺に埋めたところで、すぐにそれを悟った。
何度も放った精の名残が感じられない。
時間は置いたが、まだ一夜は過ぎ去っていない。
あんなにも激しく抱いて染め上げた蛍の蜜壺の中は、抱く前と余り変わらない様子だった。
(鬼の身体故に精を吸収したのか…しかしこれ程までとは)
同時に確信する。
やはり血液だけでなく、欲となる精も蛍にとっては糧となるものだったのだ。
人間にとっての米や肉と同じ。
体を満たして、飢餓を抑えるもの。
「…杏寿、郎…?」
は、と浅い息をつきながら、蛍が頸を傾げる。
その緋色の目は、真剣な面持ちながらも心なしか嬉しそうに見える杏寿郎の表情(かお)を捉えていた。
「そ、そんなところ見てそんな顔しない、で……恥ずかしい、から」
「む? すまん! 蛍の体を、俺自身が造り上げているのかと思うと嬉しくて。ついな」
「…?」
「だがこれでは、折角時間をかけて解したというのに初めからやり直しだ。流石の再生力だな」
「ほ…褒められてるのか、よくわからないんだけど…」
「勿論、褒めているぞ! それにやり甲斐はある」
「やり甲斐ってなん…ッ」
皆まで言い切る前に、蛍の声が高くしなる。
その眼下には、秘部へと顔を埋める杏寿郎が映し出されていた。