第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし✓
「あッ…ぁう…!」
ゆるりと腰を揺すれば、スイッチが入ったかのように反応を示す。
逃げることもなければ、縋り付くこともない。
名を呼ぶこともなければ、愛を告げることも。
ただ貪欲なまでの欲望に貫かれ、感じるままに体を呼応させることしかできないのだ。
身も心も、そこに突き落とされたかのように。
「は…っ蛍…」
鮮やかな瞳は、他の誰でもない自分にだけ向けられている。
自分の一挙一動に、拾い損ねることなくつぶさに反応を返してくる。
それは乾いた砂地の心に、一粒の雫を落とすような奇妙な心地だった。
満たされるには足りない。
だがそれこそ待ち望んでいたものだ。
「蛍…っ」
体を繋げ、腰を振る。
誰にも触れられない彼女の最奥を、己の欲で満たす為に。
「あッン…ッ! ひァ…!」
今この瞬間だけは、蛍を成すもの全て。
ひとえに己のものなのだ。
「く…ッまだ、だ…ッまだ足りないッ」
無防備に曝け出される首筋へ、熱い吐息を吐きかける。
いくら注ぎ込んでも、足りないと心が逸る。
その思いのままに腰を打ち、震え続ける体を掻き抱いた。
「ぁあ…ッん…!」
欲を放つ一歩手前。その予感を感じ取ったのか、蛍の嬌声に艶が帯びる。
溺れた瞳は薄暗い部屋の中でも鮮やかに浮かび上がり、求めるように杏寿郎を映し出した。
心は未だ砂地のまま。
見つけた僅かな潤いを貪るように、汗ばむ体に、濡れた瞳に、想いを吐いた。
「っはァ…"五度目"、だ…ッほたる…!」