• テキストサイズ

いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし✓



「あッ…ぁう…!」


 ゆるりと腰を揺すれば、スイッチが入ったかのように反応を示す。

 逃げることもなければ、縋り付くこともない。
 名を呼ぶこともなければ、愛を告げることも。
 ただ貪欲なまでの欲望に貫かれ、感じるままに体を呼応させることしかできないのだ。

 身も心も、そこに突き落とされたかのように。


「は…っ蛍…」


 鮮やかな瞳は、他の誰でもない自分にだけ向けられている。
 自分の一挙一動に、拾い損ねることなくつぶさに反応を返してくる。

 それは乾いた砂地の心に、一粒の雫を落とすような奇妙な心地だった。

 満たされるには足りない。
 だがそれこそ待ち望んでいたものだ。


「蛍…っ」


 体を繋げ、腰を振る。
 誰にも触れられない彼女の最奥を、己の欲で満たす為に。


「あッン…ッ! ひァ…!」

 
 今この瞬間だけは、蛍を成すもの全て。
 ひとえに己のものなのだ。


「く…ッまだ、だ…ッまだ足りないッ」


 無防備に曝け出される首筋へ、熱い吐息を吐きかける。
 いくら注ぎ込んでも、足りないと心が逸る。
 その思いのままに腰を打ち、震え続ける体を掻き抱いた。


「ぁあ…ッん…!」


 欲を放つ一歩手前。その予感を感じ取ったのか、蛍の嬌声に艶が帯びる。
 溺れた瞳は薄暗い部屋の中でも鮮やかに浮かび上がり、求めるように杏寿郎を映し出した。

 心は未だ砂地のまま。
 見つけた僅かな潤いを貪るように、汗ばむ体に、濡れた瞳に、想いを吐いた。


「っはァ…"五度目"、だ…ッほたる…!」

















/ 3625ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp