第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし✓
「っは…は…ぁ…ひゅ…」
途切れ途切れの息を繋ぎ合わせて、蛍が絶頂の余韻に震える。
糸が切れた人形のように、かくんと落ちる頭。
敷布団へとぶつかる前に、後ろから伸びた腕が受け止めた。
「ッはあ…」
噛み付いていた項から口を離し、深く息を零す。
落ちた蛍の体を抱き止めたまま、杏寿郎も荒い息を繋いだ。
気を失ってしまったのか、否か。
暫くはその体制のまま蛍に覆い被さっていたが、ゆっくりと身を引くと、人形のような蛍の顔を上げさせた。
「ぁ……ぅ…」
仰向けに寝かせた蛍が、朧気に掠れた声を漏らす。
今だ縛り上げられている両手首が、背中と敷布団の間で窮屈そうに挟まれている。
それでも身を捩ること一つできず、蛍は誰ともなく宙を見上げていた。
涙の跡が残る瞳。唾液に濡れた唇。
乱れた髪が汗ばむ肌に貼り付き、淫らな色気を残す。
そっと、杏寿郎の手が頬に触れる。
それだけでひくんと震える白い肌は、快楽の余韻の波に漂っているようだ。
辛うじて細い意識を繋げているような蛍に、杏寿郎が顔を寄せる。
唇が触れ合うぎりぎりまで近付くと、憂いを残すような吐息をついた。
「…ほたる」
呼んでも、目の前の体は反応を示さない。
ひくん、ひくん、と時折思い出したように波打つ体は、鬼とあっても限界を迎えていた。
そろりと、親指の腹で頬を撫でる。
音もなく、杏寿郎は触れるだけの唇を重ね合わせた。
「っ…ッ!」
朧気だった蛍の瞳が見開く。
恭しく口付けたまま、愛液と精液でどろどろになった蛍のなかへ、再び杏寿郎が陰茎をねじ込んだのだ。
ゆっくりとでも確実に押し進んでくる欲の塊に、蛍が声なき声を上げる。
「っは…! ぁ…あ…ッ」
唇を離せば、大きく息を吸い込んだ蛍が杏寿郎を見ていた。
きりきりと縦に強く割れた瞳は尚も鮮やかな緋色を引き出しながら、焦点が合っていない。
濡れそぼり、快楽に染まり落ちた瞳だ。