第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし✓

「んぅ…っ」


　息も絶え絶えな蛍の唇を、容赦なく奪う。
　深く口付ければ、ふぅふぅと息荒く蛍は舌を退いた。

　顔を両手で固定すると、逃げようとする素振りの舌を追い絡め取る。
　膣奥に収まったままの肉棒を緩く揺らせば、鋭い牙が蹂躙しようとする舌に喰い込んだ。


「ッ」


　びり、と一瞬鋭い痛みが走る。
　反射的に顔を退いた杏寿郎の下で、腕を拘束されたままの蛍が身を捩りうつ伏せに変えた。
　両手は使えない為、芋虫のように這いずることしかできない。
　それでも杏寿郎が体を退いたこととうつ伏せに変えた行為で、秘部から肉棒が抜け落ちる。


「はッ…」


　その隙をついて、力の入らない膝を震え立たせながら蛍は杏寿郎の下から這い出した。

　逃げ出そうとしているのか。畳の上へと身を捩り這いずる蛍の背を、見開く双眸が見下ろす。
　抗うように口内で牙を立てられたことも初めてだった。

　沈黙。

　薄暗い部屋でも炎が灯るように鈍く光る双眸が、ふ、と細められる。
　唇の端に滲み付いた己の血を舌で舐め取ると、鬼には到底見えない震える腰を鷲掴んだ。


「っあ…！」


　ぐっと強く引き寄せれば、弱々しい体は呆気なく杏寿郎の下に引き摺り戻される。


「んあァ…！」


　そのまま腰を高く持ち上げられたかと思えば、後ろから容赦なく杏寿郎自身で貫かれた。
　抵抗らしい抵抗もできず、易々と肉棒を咥え込んだ蛍の口から落ちる唾液が、乱れた敷布団を濡らす。


「や…も…ッ射精さな、で…っ」

「何をだ？　俺の精か？　まだここには一度しか放っていないぞ」

「お尻…も、いっぱい…ぜんぶ…おかし、なる…っ」


　それ以上の射精を受け入れたことはあっても、こうも短時間でここまで注がれたことはない。
　稀血によるものか、いつも以上に杏寿郎の精子を受け入れる体はその度に熱に浮かされ翻弄されてしまう。

　まるで杏寿郎の精こそが、稀血に劣らぬ極上の馳走であるかのように。

　蜜壺よりも吸収力のいい腸内は、すっかりその味を蛍の体に染み込ませてしまった。
　衰えることのない精子を次に味わえば、今度こそ堕ちてしまう。