第7章 柱《参》✔
「あ、ありがと後藤…」
「いいよ、こいつが変なこと言ってんだ!(オレの為だけどな!)」
「……」
やはり正義の鉄拳にしては些か違和感を覚える。
菊池と後藤のやりとりをまじまじと見上げていれば、ぱちりと二人と目が合った。
「あれ…蛍さんって不思議な目をしてるのね?」
「!」
核心に触れるかのように問い掛けてきた菊池に、蛍の心臓が跳ね上がった。
鬼の目が人のそれと違うことは蛍も知っている。
蛇のように縦に割れた瞳孔に、蛍の目には血のような緋色も混じり込んでいる。
しのぶが皮肉のように「綺麗だ」と褒めているのは、その所為だ。
俯く蛍に、慌てたのは蛍だけではなかった。
「(どうしよう! 鬼だってバレちゃう!)あ、あの、ねっ蛍ちゃんは、その…っ梅干し!を食べ過ぎて目が赤くなっちゃったの!」
「…何言ってんスか?」
しどろもどろに言い訳を吐き出す蜜璃を見る後藤の目は、若干引いている。
ボンッと羞恥で顔を赤くする蜜璃に、しかし菊池は頸を横に振った。
「あたしもそう思ったんですが…光の加減ですかね?気の所為ですよそれ」
「え?」
「だってほら」
恐る恐ると顔を上げる。
促されるまま蛍の目を見た蜜璃だけでなく、義勇もまた無言で目を見開いた。
鬼独特の瞳は、後藤達人間と変わらない黒い瞳へと変わっていたからだ。
「そっ…(え、なんで?…あ! そういえば蛍ちゃん、体をお人形さんみたいに変化させられるし…瞳も変えたんだ!)そう、だったわね…あはははは」
「…大丈夫っスか?」
呆れ声の後藤に、ボンッと再び蜜璃の顔は真っ赤に染まった。
そんな周りの空気に同調することなく、蛍はほっと安堵の息をついていた。
知っていた訳ではない。
ただ自身の体を大きく変化させられるのならば、部分的な変化も可能ではないかと賭けてみただけだ。
(杏寿郎には鬼殺隊のことばかり訊いてたけど、これからは鬼のことも勉強するようにしよ…)
一先ず鬼だと気付かれる危険は低くなったが、今後の自分自身の為にもと小さく頷く。
その蛍の様子を伺っていた義勇が、ふと口を開いた。