第7章 柱《参》✔
「と、とにかく入れてもらいましょっそこで皆が何をしていたのか訊けばいいでしょ?」
「…彩千代は、原則柱以外の人間に接触させてはならない」
「あっ(そうだったわ!)」
隠達には聞こえないように、ぼそりと伝えてくる義勇に蜜璃ははっとした。
隠達は、当然鬼である蛍のことを知らない。
偶然ではあるが、わざわざ彼らがいる所で足止めをするべきかと。
(でも蛍ちゃんを休ませてあげたいし…っどうしようッ)
一人無言で悩む蜜璃に、義勇は聞こえないように息をつくと抱かれたままの蛍に目を向けた。
「長居はできない。お前の酔いが醒めたら出る。いいな」
「…ふく」
こくりと頷く蛍に、これでいいかと義勇の目が蜜璃に問い掛ける。
蜜璃の悩みは訊かずとも理解していたようだ。
ようやく蜜璃の手を離れて、ゆっくりと足に地を着ける。
不安定だった揺らぎがなくなり、ほっと蛍は口枷の隙間から息を零した。
「ささ、どうぞ甘露寺殿。冨岡殿。私達はお邪魔でしょうが、温かい茶でも出しましょう」
「お邪魔だなんて、そんなことないわ。それより皆さん、此処で集まって何をしていたの?」
通された畳の広間には、やはり大勢の隠達の姿があった。
偶然ではなく、明らかに意図的に集まったであろう集団の姿だ。
差し出された座布団に座りながら蜜璃が至極真っ当な疑問を投げ掛ける。
「私達は、鎹鴉を常に共に付けている訳ではありませんので。こうして定期的に集会を開いては、情報交換や儀談を行っているのです」
「まぁ、そうだったの! ですって冨岡さん」
義勇が予想していたような不穏な影など一切なかった。
隠として鬼殺隊に尽くそうとする彼らの姿勢に、蜜璃の目が輝く。
「…邪魔をしたようだな」
「いえいえ。勝手に待機所を利用していたのは我らの方なので。柱様方の休憩所ともなる場所です。どうぞ遠慮なく使用されて下さい」
隠の中でも上の立場なのだろうか。
重鎮たる声色の隠の男が穏やかに微笑む。
「して、その方は…蛍さん、と言いましたか? 初めて見る御方です」
その目が、隅の座布団に座り込んだ蛍へと向いた。