第27章 わが情(こころ) 焼くもわれなり 愛(は)しきやし
一理は、あるのだが。
「しかし、不死川の血は稀血で…」
「うん、だから尚更。稀血にも慣れておきたいから。二人も柱がいてくれる今なら、安心して挑めるだろうし」
「慣れんのかァ? お前が俺に」
「不死川に、じゃなくて稀血に、です。やらないことには、慣れる慣れない以前の問題だから。不死川も協力して」
「頼み方が違ェ。協力して下さい、だろォ。提供すんのは俺だ」
「…ドウゾ協力シテ下サイ」
「なんだァそのカタコト口調はァ」
「オ願イシマス」
「馬鹿にしてんのかオイ」
「不死川様ノ稀血ヲ頂ケルナンテ至福ノ至リ」
「口と顔が噛み合ってねェんだよ!」
「本心デスー嬉シイナー」
「よォし言ったなァ喉奥まで拳ごと突っ込んでやらァ!!」
「し、不死川様落ち着いて…! 姉上もそんな死んだ目しないで!!」
生気のない真顔の蛍を、胸倉掴んで凄む実弥。
そんな二人を慌てて止めに入る千寿郎。
ぎゃいのぎゃいのと騒がしくなる目の前の光景を見ながら、杏寿郎は一人沈黙していた。
その顔は、どことなく腑に落ちないものとして。
「──へェ。面倒な摂取方法してんなァお前」
「じゃなくて、それが一番効率がいいの。柱の体を傷付けなくて済むし」
「傷は付くだろォが」
「最小限って意味。いいから、早くやって早く終わらせよう」
どうにか千寿郎の必死の説得により、一騒動は静まった。
胡坐を掻いてまじまじと注射器を目線の高さに合わせる実弥を、向き合い座る蛍が急かす。
柱から血を貰う。
その行為を聞いてはいても、千寿郎も目の当たりにしたことはなかった。
故に興味を抱いて、観察させて欲しいと頼み込んだ。
「千寿郎。俺の前には決して出ないように」
「はい」
部屋の隅で座する杏寿郎の背後から、恐る恐ると顔を出しながらもその目は興味津々に二人を見つめている。
「採血は胡蝶がやってる方法と同じだから。この紐で腕を縛って血管を浮かせるから、そこに注射針を合わせて…」
「あ?」
「って! 今説明してたのにッ」
興味本位に注射針に、微かに触れた。
その一瞬でさえも、鋭利な針は易々と皮膚を貫通し、ぷくりと実弥の指先に赤い真珠を浮かばせた。