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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第26章 鬼を狩るもの✔



「あいつを地獄になど逝かせる訳にはいかん。ましてや鬼の為にその身を捧げるなど、あってはならないことだッ」


 それは父親としての感情か。
 元柱、元鬼殺隊としての感情か。
 目の前の槇寿郎の心境はわかり兼ねたが、そんなことはどうでもよかった。


「だから死ねないと言うのなら絶対に死ぬな。あいつが命を絶った後はどうとでもするがいい」


 吐き捨てるように告げる槇寿郎に、鮮やかな光を放っていた蛍の瞳が心許なく揺れた。
 わなわなと震える口角がへの字に下がり、薄い膜を這っても耐えていた瞳に、見る間に透明な雫が溜まっていく。


「っふ…、ぅ…うッ」


 抑え込んでも、嗚咽が漏れた。
 かたん、と握り締めていた日輪刀が畳に落ちる。

 生きることを強く望んだ。
 この世界で、共に歩むことを切に願った。

 なのに彼は、死の先へも想いを貫こうとしてくれているのだ。


(──杏寿、郎)


 胸の奥が、かっと熱くなる。
 堰を切ったようにこみ上げるもので、蛍の見る世界は全てが滲んでぼやけた。

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