第26章 鬼を狩るもの✓
沈黙ができる。
先に視線を外したのは、槇寿郎だった。
「悪鬼は倒したのか」
「はい! 塵一つ残さず滅しました!!」
威勢よく応える杏寿郎に「声がでかい」と詰り、背を向ける。
「手負いでも鬼は鬼だ。柱ともあろう者の屋敷前に転がす訳にはいかん」
だからと言って始末をしようものなら、夜中に爆音のような声を発する息子が黙っていないだろう。
柱二人がかりで、更には鬼も加勢したというのに、それぞれが手負いの姿。
外野から見ているだけでも、相手をしていた鬼の脅威の規模は計り切れない程巨大だった。
まだその名残は残っている。
蛍の血鬼術が消えゆく様を不思議に思った村人達が、起きてきているのだ。
これ以上、事を荒立てる訳にはいかない。
(…仕方ない)
そう言い訳のような理由を己の中で呑み込んで、槇寿郎は長屋門を潜り、振り返った。
「全員、中に入りなさい」
鬼殺隊も、市民も、罪人も、鬼も。
全ては一先ず場を落ち着けてからだと、静かに招き入れた。
まさか蛍が煉獄家の戸を跨ぐことを許されるとは。
槇寿郎を説得させられるまで、蛍を抱えて近場の病院でも宿でも取り押さえて構えようと考えていた。
だからこそ予想もしなかった答えに、杏寿郎が目を見開く。
途端に、口角を大きく上げて笑った。
「ありがとうございますッ!!」
「煩いッさっさと入れッ」
「はい!!!」