第26章 鬼を狩るもの✓
「一度だァ煉獄!! 決めるぞ!!」
「ッむゥ…!」
呼吸を繋ぐ。
凍り付く体などなんだ。
体を燃やせ。
心を燃やせ。
体内を巡る血液が熱く燃え滾る。
胴体を覆う氷が、びしりと罅割れた。
「狙いはァ」
「全て吹き飛ばすッ!!」
目だけを狙うなどと言うものか。
鬼の細胞全てを、塵一つ残さず消し飛ばす。
「そんな半端な体で、半端な呼吸じゃあ俺には届かないよ」
砕け散った菩薩の残骸から、氷の蔓が幾重も伸び出す。
童磨の頭を守るように、しゅるしゅると蛇の如く覆い尽くしていく。
否、体を再構築しようとしているのだ。
忽ちに人の形を造り出す氷の蔓。
それを眼下にしても、二人に焦りはなかった。
互いに何をすべきかわかっていたからだ。
杏寿郎と実弥。
落下した互いの足が、タンと影波の地に着く。
「炎の呼吸」「風の呼吸」
流れるように構えを取る。
熱源のような呼吸と、切風のような呼吸が重なり合った。
「「壱ノ型」」
紡いだのは、初めて己のものとした呼吸の一手。
〝烈火・不知火(れっか・しらぬい)〟
〝塵旋風・舞(じんせんぷう・まい)〟
更なる密度を増した壱ノ呼吸が、足場の影波を弾き飛ばし猛進する。
火柱と竜巻と化した二人は、互いを巻き込み一つの斬撃へと姿を変えた。
足場を抉り、空気を斬り、通る道全てを焼き尽くす。
数多の氷の蔓により、体を構築した童磨が片手を翳す。
世界を凍らせる冷気を前に、止まることなく炎の風が喰らい付いた。
ズズン…ッ!!
足場の影波が揺らぐ程、重い地響きが走る。
巻き上がる煙と風により、直視すらままならない。
「きゃあ…!」
「ひぃッ!?」
「く…ッ!」
爆風により倒れ掛かる八重美と与助の体を、守るように影波が包み込む。
鬼である蛍の体を切り刻む程の爆風だ。炎と風の呼吸の残刀だとわかる。
肌に小さな赤い傷を幾つも作りながら、蛍は目を凝らし先を見据えた。
(童磨は…ッ!)