第26章 鬼を狩るもの✓
「それはリボンに取り憑いていた童磨の一部なの…! 童磨本人じゃないッ!!」
「はァ!? そいつはお前の足首に取り憑いてたやつか!」
「そう! 私の片足を媒介にして童磨の形をしてるだけ!」
「ンだそれはァ…じゃあ頸を斬っても死なねェってのかァ!」
張り上げていた蛍の声が止まる。
自分の足の肉が童磨の身体となっているならば、それを傷付けても童磨自体には響かない。
それを操っている者を倒さなければ。
(童磨本人?…いや、この場合は──)
は、と見開いた目が、遥か遠くの生首を捉える。
「目ッ!!」
「めェ?」
「童磨は、自分の目をリボンに移して私を見張ってた! 童磨の目を狙ってッ!!」
「! 聞こえたかァ煉獄ッ!!」
再び童磨目掛けて地を蹴る。
実弥の声は、確かに杏寿郎の耳に届いていた。
「う…ッ」
「煉獄ッ!!」
その身を、氷の菩薩に鷲掴まれて。
「うーん、少し遅かったかな。彼はもう終わりだ」
ぱきぱきと、菩薩に掴まれた胴体から氷漬けにされていく。
実弥の腕とは比較にならないその範囲は、内臓にまで達するだろう。
そこで迎えるべきは死だけだ。
「杏寿郎様…ッ!!」
八重美の悲鳴が響き渡る。
「ッ…!」
震える足に鞭打ち、蛍は片手を前に突き出した。
ざぱりと湧き上がった影波が、菩薩の足場に降りかかる。
途端にびきびきと硬度を増すと、菩薩の足を影波の地へと縛り付けた。
「一度しか、できない…ッ踏ん張ってッ!!」
ぶしりと、蛍の突き出した腕から血が吹き出る。
「ッしゃらァ!!」
菩薩の下に辿り着いた実弥が、高く跳躍する。
くるりと体を反転させ、逆さまに体を捻ると刃から暴風のような斬撃が繰り出された。
〝玖ノ型──韋駄天台風(いだてんたいふう)〟
まるで台風のような荒風だった。
無数の巨大な斬撃が、縦横無尽に駆け巡り、菩薩の体を斬り刻む。
とりわけその攻撃は腕に集中しており、杏寿郎の体が氷で覆われる前に粉々に砕いた。