第26章 鬼を狩るもの✔
忌み嫌われ、罵倒され、遠ざけられ、打ちのめされる。
いつも世界の顔色を伺っては、邪魔にならないようにと部屋の隅で縮まり続ける。
そんな日々は、突如として終わりを告げた。
『何してんだぃこの…ッ!』
『ッ! ッ…!』
『煩いッ! よくもあたしの一張羅を汚してくれたね!!』
きっかけは些細なことだった。
二日間ろくに食事を取っていなかった体では物一つ運ぶのも一苦労で、躓いた先で女の着物の端を裂いてしまった。
それだけだ。
それが女の逆鱗に触れたのか、単に機嫌が底をついていたのか。
原因はわからないが、立てなくなるまで酷くぶちのめされた。
ようやく終わりを告げたかと思えば、髪を鷲掴まれ暗い部屋へと押し込まれる。
『ッ!?』
『いいと言うまで出てくるんじゃないよ!!』
それはいつも閉じ込められていた押し入れとは違っていた。
生臭い悪臭。吐き気を催す汚物達。
『塵のお前には塵溜めがお似合いさッ!!』
放り込まれたのは、塵屑入れとして使っていた桶だ。
細く小さな体をねじ込められ、上から蓋で頭を押さえ付けられる。
中には既に腐敗した生塵が溜まっており、吐き気を催し暴れたが出ることは叶わなかった。
「たすけて」
「ごめんなさい」
「もうしません」
「ここからだして」
懇願したくても、言葉にできる術がない。
嘔吐と嗚咽で漏らした声は、煩いと桶を蹴られて怒鳴られた。
ひもじい。気持ち悪い。
腹が鳴る。頭が痛い。
空腹に耐え兼ねて腐敗した生塵を口にしては、更に嘔吐する。
血の臭いが鼻と口にこびり付いて、頭が痺れるように割れた。
一日目は音もなく泣き叫んだ。
二日目は嗚咽を漏らした。
三日目は喉も枯れ果て。
四日目は朦朧とした意識をさ迷った。