第7章 柱《参》✔
やっぱりこのおっかな柱におはぎは触れちゃならないものだったんだ。
想像つかないもんね、こんな人を瞬殺しそうな顔でおはぎ頬張る姿とか。
それがわかってて天元も選んだんだろうね悪趣味だな!
「誰が俺におはぎを持っていけなんつった。あァ?」
「ひっ」
伸びた不死川実弥の手が、ぐわしっと私の中着の襟を掴む。
そのまま至近距離で脅しの脅迫をされて思わず両手が上がった。
怖い!
「ぼ、暴力はダメよ不死川さん…!」
「暴力じゃねェ訊いてるだけだ。ただし答えなかったらテメェの頸の骨を折る」
「っ! 天元です!!」
バキリと空いた手の指の骨を鳴らすおっかな柱に即答をかます。
私は悪くない! 不可抗力!
こんな脅しかけられたら誰だって白状するから…!
「天元だァ?」
「う、宇髄天元に、呼吸稽古で使命された罰則で…おはぎを持ってけって…」
「呼吸稽古だと…?」
うわ。別の触れちゃならないものだったかもしれない。
ミシリときつく襟首を更に引き上げられる。
こ、これ以上は足が床から離れてしまうかも…っ
「テメェ、鬼の癖して煉獄の稽古を受けてるらしいじゃねぇかァ。あの宇髄も負かしたって聞いたぞ」
「ま、負かしては…引き分け、と言うか…」
「腕の立つ鬼を殺すのは余計に血が昂る。俺とも手合わせしろよ」
「え、遠慮します!」
天元の時も殺されなかったのは奇跡のようなものなのに。
このおっかな柱なんて相手にしたら確実に殺される…!
「どうせいずれは死刑になる身だ。今死ぬのも後で死ぬのも大差ねェだろォ」
「あ、あります…!」
てか死刑になる気はないんで…っていうかそれ以上上に上げないで!
足! 足が床から浮くから!
「彩千代を死刑にはしない。殺したいならまず俺と話せ」
「あ?」
ミシリと骨が軋む音がした。
私の体からじゃない。
私の襟を掴んで持ち上げていた、不死川実弥の腕からだ。
筋肉のついたその手首を掴んでいたのは義勇さんだった。
感情は見えないけれど、揺るがない黒眼が不死川実弥に向いている。