第7章 柱《参》✔
場の空気を読めないのか敢えて読んでいないのか。わからないけど火に油を注ぐ行為はやめて欲しい。
いくら義勇さんの腕が強くても、とばっちりは勘弁だから。
いや勝手に上がった私もそもそも悪いんだけどごめんなさい!
「別に好きじゃねェ」
そしてなんでそこに律儀に応えるかなこの風柱は!
そんな今から飼育箱の掃除します!って格好で言われても説得力ない…!
「だがこのカブト虫は不死川が飼っているんだろう?」
「飼ってねェ」
「その麻袋の葉は」
「持ってねェ」
何その子供みたいなやり取り…。
相手が柱同士なだけに緊張感が半端ない。
けど会話の内容は果てしなく子供だ。
義勇さんもズバズバ空気を読まずに言ってるけど、不死川実弥も不死川実弥で果てしなく子供だ。
そんな幼稚な否定、言い訳にもなりませんて…墓穴掘ってるだけだから。
「不死川さん、もしかしてカブト虫を見られたのが恥ずかしかったんじゃ…」
「あァ?」
「あー! あー! あー!」
なんてこと言うかな蜜璃ちゃんまで!
此処には空気を読める柱はいないのかな!?
思わず大声で遮ったけど、時既に遅し。
ビキリと額に血管を浮かべた不死川実弥の血走った目が、義勇さんからこちらに向いてしまった。
「おい今なんつった鬼ィ」
「何も言ってません!!」
私じゃない!
とばっちり!!
「あ、あのっ勝手に上がったことは謝ります…! だけど、このおはぎをお裾分けに来ただけで…っ」
「おはぎィ?」
「そうなの! 不死川さんの為に、私と蛍ちゃんと冨岡さんとで作ったのよっ」
「…仕方なく従っただけだ」
とにかく目的を果たせば堂々と帰れる。
風呂敷を指差して事情を伝えれば、蜜璃ちゃんも説明をしてくれた。
というかあの殺気だらけの風柱に笑顔で話し掛けられるなんて凄いな…本当、尊敬する。
義勇さんまで話を合わせたから嘘だとは思わなかったんだろう。
カブト虫の部屋の真ん中に置いていた風呂敷に、不死川実弥の目がようやく止まる。
「誰の差し金だァ」
かと思えば余計に苛立った表情で返された。
いや…おはぎ如きで差し金なんて。
そこまで怒る理由にならないと思うけどこのおっかな柱にはなるのかもしれない。