第7章 柱《参》✔
前回のお泊まり会で、義勇さんとの非ぬ誤解を招いた朝。
その場でとにかく必死に事を説明すれば、最初こそ誤解していた柱達も皆最後には耳を傾けて納得してくれた。
神妙な顔で誤解していた杏寿郎を納得させられたことには一番ほっとしたけど。
だから義勇さんと私の間に何もなかったのは、蜜璃ちゃんも知ってるはず。
だけど今のあの状態じゃ私の訴えなんて聞いて貰えないな…。
…仕方ない。
結局私の出した結論は、渋々義勇さんについて行くことだった。
「さぁ着いたわ! 此処が不死川さんの…蛍ちゃんっ?」
お昼間近になって、ようやく訪れた不死川実弥の屋敷。
本来は訪れたくなかった所。
だけど今は一刻も早く訪れたかった所だ。
屋敷の玄関口が見えた途端、蜜璃ちゃんの紹介も待たずにその中へと飛び込んだ。
「っはぁ…!」
「大丈夫?」
「辛うじて…」
手汗はびっしょり。
冷や汗もびっしょり。
一秒足りとも休むことをしない義勇さんについて行くまま、一秒足りとも緊張感を途切れさせることもなく。ようやくその強制連行から解放された時には疲労困憊していた。
体力よりも精神の方で。
心配する蜜璃ちゃんに見守られながら、深く息をついて玄関に座り込む。
つ、疲れた…。
「これくらいで音を上げてどうする。まだ不死川に会ってもいないのに」
う。そうだった。
これからが本番だった。
義勇さんの言葉に更に落ち込んでしまう前にと、どうにか気力で顔を上げる。
何事も早さが肝心。
さっさと済ませてさっさと出て行こう。
「ごめんくださーい!…あれ? いないのかしら」
不死川の…なんだったっけ…そうだ風柱邸。は、恋柱邸に比べると素っ気無い風貌の建物だった。
勿論造りは立派なんだけれど、なんというか…物が少ないというか。余分なものがない感じがする。
そんな玄関口から呼びかける蜜璃ちゃんに、だけど誰かが出てくる気配はない。
「蜜璃ちゃん。ちなみにあの風柱に継子はいるの?」
「不死川さんは継子を取っていないの。最近の若い隊士は弱くて鍛える価値もないとかで…」
ああ、なんだかあのおっかな柱らしい理由だ。
一度しか会ったことはないけれど、なんとなく察する。