第7章 柱《参》✔
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「それでねっ不死川さんは風柱として鬼殺隊を支えてる人なのっ」
蜜璃ちゃんの話を相槌もなく聞き流す。
不死川実弥に興味がないから話半分に聞いているんじゃなく、私の頭は別のことでいっぱいだった。
じりじりと焼け付くような太陽光。
照らされた地面の反射が目に眩しい。
この時期は特別暑い訳でも、特別寒い訳でもない。
人間時は心地良いと感じていたはずの日光日和だ。
なのに今の私には、じりじりと焼け付くようなものに感じる。
私自身の動作やなんでもない微風一つにも気を配る。
もしこの垂衣が捲れてしまったら、もし肌に太陽光が当たってしまったら。
そんな不安が尽きない中、一歩踏み出すだけで決死の思いだ。
「それと不死川さんは…蛍ちゃん?」
「……」
「大丈夫? 蛍ちゃん?」
「……」
「えっと…蛍ちゃん、」
「……」
「ええっと…どうしよう、冨岡さん…」
一歩一歩、足元を見ながら転ばないように最新の注意を払い、進んでいく。
すると不意に溜息のようなものが聞こえて、視線を上げ…わっ
「遅い」
「え。」
目の前には眉を寄せた義勇さんがいた。
さっきの溜息、義勇さんのものだったんだ。
確かに歩く速度はいつも以上に遅いけど、こればっかりは無理な話で。
死と隣り合わせの状況で、平気な顔して歩けるはずがない。
変な汗は掻いているし、体にも変な力が入っているし。
そんな私の状態を見て心境を悟ったのか、じろじろと見られたかと思えば不意に手首を取られた。
「掴んでいろ」
「?」
引かれた手が触れたのは、義勇さんの羽織の袖だった。
えっと…これを掴めってこと?
言われるがまま裾を握れば、すたすたと歩き出す義勇さんにつられて足も進む。
別段速い速度じゃないけど、急なことに足がもたつく。
それでも転ばずに済んだのは、義勇さんの羽織を掴んで体の軸を支えられたからだ。
「あ、あの」
「離すな。不死川の所までそのままでついて来い」
ええっ!?
振り返りもせずに告げられて、焦る。
思わず助けを求めるように蜜璃ちゃんを見れば、何故か笑っていた。
頬を染めて無言で声を詰まらせるように笑…あれは胸きゅんしてる真っ最中だな。