第26章 鬼を狩るもの✓
バキ ンッ
童磨の冷気は、蛍の足を凍て付かせるだけではなかった。
「──え」
硬いものが砕けるような嫌な音。
耳にしたのに反応が遅れたのは、痛みなど感じなかったからだ。
それでも確かに、蛍の目に映し出されていた。
凍らされた片足が、足の付け根から砕け落ちている様を。
「ひぃッ! 柚霧お前…足が…!!」
血は吹き出さない。
冷気により切断された断面はがちがちに凍らされていた。
それでも狼狽える与助同様、蛍も動揺を隠せなかった。
「ぁ、あ…っ」
足が、と声にならない声が震える。
そんな二人の目の前で、氷漬けになった蛍の足がぼこりと波打った。
足首に巻かれていたリボンが、砕けた蛍の足に溶け込むように同化していく。
氷漬けになっているはずの足が、ぼこりぼこりと膨らんでは収縮し、別のものへと形取っていく。
強い癖を持つ長い白橡の髪。
血の気を退いたような青白い肌。
高い身長に筋肉の付いた体。
纏う服まで再現してその場に現れた男が、しゃりんと美しい扇を開く。
「ふう。やっぱり苗床になる"肉"がないと、この姿にはなれないなあ」
太い眉を下げ気味に、笑う口元には鋭い牙。
虹色の瞳を細めると、唖然と見上げる蛍へと笑いかけた。
「やあ、蛍ちゃん。助けに来たよ」