第26章 鬼を狩るもの✓
今まで攫った女達が身に付けていた装飾品は、利用価値があれば売り物にした。
八重美が持っていた純白の髪飾りも、あまり見かけない一級品だった。
それでも蛍の足首を飾る髪紐は、与助が今まで見た中で随一に目を奪われる程美しかった。
都内市場でも見かけない、見る角度で多彩に輝きを変える美しいリボン。
一体どんな技術で作られたのか。
一体どんな男が柚霧へと贈ったのか。
一体どんな想いを込めて。
「離、して…それは外れない…ッ」
「あ?」
童磨に結び付けられた特殊なリボンだ。外そうとしても外れない。
それを与助がそんな事情を知るはずもなく、蛍の拒否に苛立つと更に力任せにリボンを引き千切ろうとした。
「っだから外れないって!」
「くそ…ッンだこれァッ」
おろおろと二人の様子を伺うテンジは口を挟めない。
蛍が逃れようと藻掻けば、更に躍起になった与助がリボンを外そうと奮闘する。
そんな押し問答が続いた。
「ったく埒が明かねぇ! なんだこれは!!」
「だから、外れないって…言ったでしょ…っ」
最後は半ば取っ組み合いにも近かった。
それでも足首で輝き続けるリボンは解れることなく、更にきらきらと輝いているようにさえ見える。
ぜぃはぁと息を乱した与助が吠えれば、夜空の地に尻餅を着く形で蛍も項垂れた。
「もう、退いて…」
力なく告げる蛍の姿を、見下ろす与助の目が止まる。
気付けば仰向けに伏せるその体に跨っていた。
膝を立てた白い生足が、妙に艶めかしく映る。
その先を滑るように目で追えば、面積の狭い布地の服が辛うじて付け根部分を隠しているだけだ。
軽い動作一つで、隅から隅まで見渡せる気配さえした。
「っ」
ごくりと与助の喉が嚥下する。
あんなにも離すまいとしていたリボンから、気付けば手は離れていた。
「──ぇ」
蛍が異変に気付いたのは、両の膝頭を鷲掴まれた時だ。
顔を上げれば、与助が覗き込むようにして股を開かせようとしている。
ぞっと背筋が震えた。