第7章 柱《参》✔
「…っ」
「彩千代、目を開けろ」
思わず反射的に目を瞑っていた。
言われるがまま、恐る恐る目を開ける。
市女笠でいつもより視界は狭いけれど、垂衣の間から確かに見えた義勇さんの顔。
今まで夜か室内でしか見えなかった顔が、太陽光で明るく映る。
シミ一つない肌に、二重の切れ目に、筋の通った鼻に、薄い唇。
明るい所で見ても、義勇さんは恐ろしく顔立ちの良い人間だった。
…柱ってなんでこんなに顔立ちが良い人間ばかりなんだろう…お館様、まさか顔で選んでないよね?
って今は違うそれ。
「異変はないな」
「う、ん」
義勇さんの言う通り、体に変な感覚はない。
「よかったぁ! これでお昼に不死川さんの所に皆でお邪魔できるわね!」
両手を合わせて喜ぶ蜜璃ちゃんに、嬉しいような嬉しくないような複雑な感情を持つ。
お邪魔はしたくないけど、太陽光の下を歩けるのは私には大きな進歩だ。
市女笠が外れてしまえば速攻死だから、下手な動きはできないけど。
「そうと決まれば早速出向きましょ! 今から行けば、きっと丁度いい時間帯に着ける気がするのっ」
柱同士の屋敷の距離感覚はよく知らないけど、あのおっかな柱の屋敷は恋柱邸からそう遠くはないらしい。
逃れられない罰則なら、早めに行って早めに終わらせた方がいい。
私以上に大きな風呂敷を軽々持つ蜜璃ちゃんの掛け声に押されて、恐る恐るもう一歩。
明るい世界の中に、踏み出した。