第7章 柱《参》✔
手渡される市女笠をつい受け取ってしまったけど、不安は残る。
「これで、その…本当に太陽光を防げるの…?」
「その虫の垂衣(たれぎぬ)も特別性だから、きっと大丈夫。自信持って!」
"きっと"って。そんなの自信なんて持てません。
だってもし失敗すれば、私に待っているのは死だけだ。
一発本番で命を捧げろなんて普通に無理な話。
「で、でも、なぁ…うーん…」
中々頸を縦に振れずにいたら、嬉々として浮かべていた蜜璃ちゃんの笑顔が陰る。
「ダメ、かしら…? これなら蛍ちゃんとお昼でも一緒にお出掛けできると思ったんだけど…」
う。その落ち込む姿やめて下さい。
凄く罪悪感が湧くから。
「結果はまだ出てない。試してみればいい」
「え」
その蜜璃ちゃんの背中を押すように、義勇さんまでもが賛同したから驚いた。
試してって。
もしそれで駄目だったら?
私、死ぬんですが。
その訴えが顔に出ていたんだろう、じっと黒い眼が見返してくる。
「危険だと判断した時は俺が止める。体が消滅する前に太陽光から隠せばいいだろう」
ええ…それってつまり痛い思いはするってことだよね。
そもそもその方法で大丈夫なの?
いくら義勇さんに腕があるからって、危険だと判断した時は、その…遅くない?
そうは思ったけど、まるで名案!みたいな顔で蜜璃ちゃんは義勇さんを見て頷いてるし。
えええ…痛い思い、したくないなぁ…。
でも元々、私の此処での立ち位置はこんなものだ。
柱に言われたなら従わなきゃいけないことは、わかっている。
「わ、かった…やってみる」
言われたからには、呑み込む他ない。
…怖いけど。
「けど、危ない時は…」
「ああ」
義勇さんが嘘をつかないことはわかってるけど、完全に信頼するには距離感が足りない。
恐る恐る頼み込めば、表情一つ変えずに頷いてはくれたけど。
…大丈夫なのかな。