第25章 灰色万華鏡✔
「…あっち向いてて」
「裸なんざ色んな男に見せてきたじゃねぇか。今更だろ」
「っそれとこれとは」
「ほたる…」
不安げなテンジの声に、一度口を噤む。
次に蛍の口から零れ落ちたのは、優しい音色だった。
「テンジ。さっきみたいに目隠し、できる? こう」
「め、かくし?」
「うん。上手にできたら、今度一緒に遊んであげる」
「あそぶ! ほんと?」
「うん。だから目隠し」
「ん!」
ぺたりと小さな両手で、テンジが己の目元を隠す。
向けていた笑顔を消すと、蛍は与助に背を向けた。
確かに好意のない男に裸を見られることなど、日常の一部だった。
だが与助から時折感じる舐め回すような視線は、首筋を寒くする。
今もまた、背中にねっとりと纏わり付く気配を感じる。
鬼殺隊となり他人の気配をより察知できるようになってしまったが故に、余計に嫌悪感が蛍の肌を撫で上げた。
(反応する方が相手は喜ぶ。さっさと終わらせよう)
欲しか見えていない男は、反応があるからこそ余計に興奮するのだ。
無表情のまま感情を殺すと、蛍は袴下帯の結び目に手をかけた。