第25章 灰色万華鏡✔
「髪や簪のように、何か手掛かりになるものがあれば記憶が触発されるかもしれない」
「そうさなァ…ってオイ待て。このだだっ広い屋敷の中を、手当たり次第に引っ繰り返して探すってかァ?」
「そうなるな!」
「そうなるのかよ…」
一世帯の民家にしては、煉獄家は広過ぎる。
現在は千寿郎一人でどうにか管理しているが、本来は使用人を数人回して維持していた大きな屋敷だ。
代々柱の家系であるならば見合った大きさかもしれないが、そんな敷地内から手掛かりを探すとなれば骨が折れる作業であることは間違いない。
迷いなく強い笑顔で告げる杏寿郎に、実弥は脱力気味に肩を竦めただけだった。
今の杏寿郎に、何をどう言っても止まることはないだろう。
頭の回転も切り替えも早いが、その名の通り己の意志を燃やし貫く性格も持ち得ている男だ。
「精々あの親父さんの逆鱗に触れなきゃいいけどなァ」
「父上は俺の好きにしろと言って下さった。問題ない!」
親子三人で暮らすには十分過ぎる広さを持つ。
稽古場としての道場と、物を納める納屋も別に存在するのだ。
庭だけでも広大な敷地を前に、二人は待ち構えるような建物を見上げた。
神隠し捜索の第二戦は、この生家だ。