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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第25章 灰色万華鏡✔



 神隠しにこそかからないようにと、一刻も早く原因を見つけ出そうとしていた。
 しかし正体不明の魔の手は、既にこの屋敷の奥底にも浸食していたのかもしれない。


「神隠しの術にかかってるのは、お前自身ってことだ」


 例え仮の話だとしても、余りにも的を得た実弥の指摘に、杏寿郎は口を閉じた。
 何より自身の感情がざわめき立っているのを、感じていたからだ。

 感情の答えは未だ掴めず。
 鬼の正体も不透明なまま。

 それでも、誰かが振り返ったような気がしたのだ。

 普通ならば同じ道は歩めない。
 同じ景色を並び見ることさえできない。
 それでもその目は、その顔は、自分を見てくれた。
 振り返って、足を向けて、手を伸ばしてくれた。


(それが〝君〟なのだろうか…)


 果たしてそれは本当に"鬼"なのだろうか。
 ぼんやりと形が掴めない誰かを思う。


「…捜そう」


 自分自身が術にかかっている。
 そう告げられれば、真っ先に危機感を覚えても可笑しくはない。
 なのに今感じているものは別の感情だった。

 見つけ出したいと思った。
 見つけ出さなければと思った。

 鬼であろうが人であろうが関係ない。
 脳裏に佇むだけの〝君〟を、この目でしかと見なければと。

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