第7章 柱《参》✔
まぁ昼起きて夜寝るのが人間の生活基準だから、夜に押し掛けるよりはいいだろうけど。
私はあのおっかな柱が寝ている間に、枕元におはぎを供える方がよかったんだけどね…。
「此処を綺麗に片付けて体も綺麗にしたら、不死川さんの所に行きましょっ」
あのおっかな柱に会う為に、わざわざ身形を綺麗にするなんて。
蜜璃ちゃんは女子力高いなぁ、見習わないと。
「でも私は昼間だと外に出られないから…」
「それもね、丁度良いものがあるの」
「?」
丁度良いもの?
「楽しみにしてて!」
小さな黒板での伝達法といい、蜜璃ちゃんは突拍子もない案を思い付くから。
また何か考え付いたりしたのかな。
でも流石に太陽の下を歩けるようになる方法なんて、ないと思うけど…。
そう思っていた。
「わぁ! やっぱりぴったり! あの時、寸法を測っておいてよかった!」
「あの時?」
「蛍ちゃんの衣服が血に濡れたから、洗う為に預かったことがあったでしょ?」
それ…確か、初めて蜜璃ちゃん達の前で自分の体を喰らった時のことだ。
台所を片付けて恋柱邸のお風呂を借りた後、私は蜜璃ちゃんに"あるもの"を貰った。
両手を合わせて喜ぶ蜜璃ちゃんの目は、私の体を万遍なく満足そうに見つめている。
蜜璃ちゃんに貰ったもの。
それは一式の衣服だった。
さっきまで着ていた姉さんに貰った一張羅の着物と袴ではなく、蜜璃ちゃんに渡されたものを着込んでいる。
確かに寸法が合っているから、しっくりと体には馴染むけど。
でもなんでこれが解決策なんだろう?
「蛍ちゃん、いつも着ているその襠有袴、大事にしてるでしょう? だからなるべくそれに似たものを作ってもらったの」
「作ってもらったって…誰に?」
「私達鬼殺隊の隊服を作っている、縫製係の隠さんよ」
「かくし?」
初めて聞いた名前だった。
それは鬼殺隊とは違うの?
「隠は鬼殺隊の主な雑務班だ。任務先での道案内や事後処理の他にも、隊服を作る縫製係がいる」
「隊士とは別物なの?」
「同じよ。最終選別を受けて合格した人達だもの」
頸を傾げていれば、義勇さんと蜜璃ちゃんが交互に教えてくれた。
つまり鬼殺隊には剣士以外の役割を持つ人もいるらしい。