第7章 柱《参》✔
それからは蜜璃ちゃんとの楽しいお料理時間。
なんてほのぼのしたものじゃなかった。
大量の餅米を炊いて半尽きにして、あんこをおにぎりの具みたいに餅米の中に入れていく。
それだけで大量のあんこはなくなってしまったから、小豆を煮詰めてまた餡作りを追加。
あんこを包んだ丸い餅米を、更に新しい餡で包んでいく。
あんこの他に、きなこやゴマ餡や抹茶餡なんかの種類も追加して、ひたすら捏ねて捏ねて捏ねまくる。
それは杏寿郎との訓練と等しく、地味な体力勝負だった。
生憎私は鬼だし、蜜璃ちゃんも捌倍娘だし、義勇さんも腕の立つ柱。
誰一人弱音を吐くことなく事は進められたんだけど…
「んん〜! これも美味しい!」
「あっまた食べてる! 蜜璃ちゃん、それ以上食べたらゴマ餡がなくなっちゃうから!」
「ご、ごめんね…あっこの抹茶餡なら余っ」
「てないから! ハイこれ!」
「むく…っ美味しい!」
「それはよかった!」
隙あらばすぐ味見をする蜜璃ちゃんから、おはぎを死守しながら作ることがとにかく大変だった。
目の前の餡を食べ切られる前にと、用意しておいた砂糖まぶしのお餅を口に突っ込む。
お餅ならお腹は膨れるだろうし、貴重な餡を食べられるよりは痛手が少ない。
そんなこんなで四苦八苦しながら全ての材料を使い切る頃には、百個できるはずのおはぎが半分の五十個と化してた…凄い。
五十個も味見と称して胃袋に入れた蜜璃ちゃんが凄い。
まぁ五十個でも十分足りるからいいんだけど。
ただ、別の問題が起きていた訳で。
「…うそ…空が明るい…」
「夜が明けただけだ」
そうなんだけど…義勇さんの言う通りだけど。
夜が明けるということは、私にとっては動ける世界が狭まるということで。
というか一晩中かかってしまった…おはぎ作りに。
蜜璃ちゃんの摘み食いを阻止するのに時間が取られたんだろうなぁ…台所の窓から薄く差し込む朝焼けに、思わず奥へと引っ込む。
実際に浴びたことはないからわからないけど、体が直感で危機を知らせてくる。
あれを浴びたら、きっと私は死んでしまう。
現に鬼は太陽光を浴びると消滅してしまうらしい。
見たことはないけど。
「丁度いいわっ不死川さんも夜より、おやつにおはぎを食べたいだろうし!」
そういう問題?