第24章 びゐどろの獣✔
「蛍なら太陽光の下でも歩ける術を持っている。それだけで朽ちることはない」
「…フン。そんなことわからんだろう」
鋭い目つきは変わらないまま、槇寿郎が杏寿郎へと噛み付いた。
「一度陽に炙って弱らせた。その状態で外へ放り出したんだ、並みの鬼なら助かるまい」
耳を疑う話だった。
大きく見開いた杏寿郎の双眸が、父の姿を凝視する。
「あの鬼ならもうとっくに死んだ…ッこれ以上執着するのはよせ!!」
喚く父の姿が、どこか遠くに感じるようだった。
(死んだ? 蛍が?)
一瞬でも陽の光を浴びた鬼の有り様は、杏寿郎もよく知っている。
現に昼間、蛍は一瞬だけ焼かれた肌を重度の熱傷のように焼け爛れさせたのだ。
それをもし全身に浴びたのなら。
その状態で、野外に放り出されようものなら。
( 死ん だ ? )
──ピシリと、亀裂が入ったような気がした。