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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第24章 びゐどろの獣✔



「鬼馬鹿ではない!」

「鬼馬鹿だァそりゃ」

「鬼全てに現を抜かしている訳ではないぞ!」

「つまり柚霧には腑抜けになってるってことだなァ」

「それは否定しない!!」

「否定しろォ柱だろォが!!」


 どんな返しも潔く高々と吠える杏寿郎に、つい実弥の声も比例して大きくなってしまう。
 神幸祭初日とあり、日は暮れたが行き交う人々は多い。
 周りの視線を集めていることに、実弥は渋々と口を閉じた。


「ったく。ンなことより、問題は鬼の尻尾すら掴めていねェことだろうが。どうすんだァ」

「うむ。不死川の言う通り、正攻法でいけないのなら闇雲に捜し回っても見つけ出す可能性は低い。柱の目でも、鎹鴉の目でも見つけられないのなら…頼るしかあるまい」

「なんにだァ?」

「俺達には見えないものが見える者の眼だ」


 花街での童磨との一件があったが故に、なるべくなら連れ出したくはなかった。
 しかし相手は上弦同様、身を隠すのが上手い鬼なのかもしれない。

 ならばここは一つ、京都のように〝色〟を辿れた蛍ならば。


「目には目を、歯には歯を。鬼には鬼を、だ」


 蛍のその眼なら、八重美の色を辿れたように、不可解な鬼の色を見つけ出すことができるかもしれない。
 花街の時のように囮役にさえしなければ問題はないだろう。


「結局アイツの異能を借りんのか…」

「そんな顔をするな。蛍は鬼殺隊の一員だぞ」

「別に今更否定はしねェがよォ」


 お館様であられる耀哉が認めたことだ。
 尚且つ、実弥自身も「自分が見張り役に就けるのならば」と耀哉と言葉を交わして納得した。
 その身で今更否定はしないが、乗り気もしない。
 鬼の力を借りなければ鬼を倒せないなどと、なんとも情けない話だと思ってしまう。

 そんな実弥の心境も理解できるからこそ、杏寿郎は言葉少なめに苦笑した。
 鬼という枠だけでは見ていない自分の方が、やはり柱の中では稀なのだろう。


 ──バサッ


「ん?」


 改めて自分の立ち位置を実感していた最中、騒がしい羽搏きが耳についた。

 すっかり群青色に染まった秋の空。
 見上げた杏寿郎の目に、更に深い漆黒の羽根が映り込んだ。











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