第6章 柱たちとお泊まり会✔
起こすこともできず、だからと言って背中には杏寿郎がいる為に身を退くこともできず。
中途半端に出した手をそのままに、義勇は迷い動くことができなかった。
「ん…起きたの、か」
「!」
そこに終止符を打ったのは背中で身動ぐ気配だった。
一瞬だけ睫毛を震わせ、太眉の下の双眸が開く。
普段の姿とはかけ離れた静かな起床の杏寿郎に、義勇は無言で即座に蛍に布団を被せた。
「おはよう、冨岡。背中を預けてすっかり寝落ちてしまった。すまない」
「……」
「冨岡?」
「…問題ない」
振り返った杏寿郎が爽やかな笑顔で告げるも、返す義勇の顔は無表情の一択。
いつも以上に素っ気なく目を逸らす義勇に、杏寿郎の頸が傾く。
「彩千代少女はどうだ? まだ寝」
「問題ない」
「て…」
「問題ない」
「…冨岡?」
「問題ない」
ふと思い至る杏寿郎が目の前の布団の山に向く。
その手が伸びる前に、即座に義勇の制止が入った。
異様に圧のある声で。
「ふぁ〜あ、」
そこにへ更に大きな欠伸が一つ。
二人の柱の起床に感化されたのか。柱勢の中で寝ていた天元が、徐に大きく寝返りを打つ。
「なんっか久々によく寝……?」
ごろりと寝返りを打てば、しのぶの隣にあるはずの布団が見当たらない。
更には杏寿郎の布団までもがない。
そのまま視線を流せば壁沿いに挙動不審な影を見つけた。
「…何してんのお前ら?」
「おはよう宇髄っ」
「おはよーさん。で、何してんの」
「別に。なんでもない」
「なんでもなくねーだろ。なんでそんな隅っこに移動してんだよ」
「別に。なんでもない」
「だからなんでもなくねーだろっての」
一人は爽やかな笑顔を見せているが、もう一人は挙動不審。と言うよりも言動が一択のみで動きがない。
それが逆に不審に映る。
ふるふると一定の感覚で頸を横に振り続ける義勇に、杏寿郎も笑顔のまま頸を傾げている始末だ。
一緒に寝ていた蛍は何処にいるのかと天元の目が捜せば、こんもりと彼らの膝辺りが布団で膨れているのを見つけた。