第24章 びゐどろの獣✔
「ん、ふふ」
「な…なんで、笑うんですか」
「さっきの千くんと同じかなぁ。なんだかとっても心地良くて」
堪らず破顔してしまう。
自分よりも一回り小さな、しかし竹刀肉刺(まめ)のできた逞しい手を優しく握り返す。
「そうだ、千くん。今日のお夕飯、私が汁物を担当してもいい?」
「いいですよ。さつまいもの味噌汁ですか?」
「ううん、それは明日ね。今日、千くん美味しそうにだんご汁食べてたでしょ? それで思い付いたものがあって」
「え、なんでしょう。気になりますっ」
「そんな小難しいものじゃないよ。町中を駆けてくれている杏寿郎にも、美味しいもの食べてもらいたいし」
「あ。じゃあ不死川様の為に、おはぎも作りましょうか」
「おはぎ。」
「?…何か変なこと言いました?」
「ううん。ちょっとね。過去、蜜璃ちゃんと大量のおはぎ作りをしたこと思い出して…」
「甘露寺さんと? それは楽しそうですね」
「罰則だったの」
「ば、っそく?」
途切れることなく会話は続く。
朝方までおはぎ作りをしたことを思い出しながら、蛍はふと竹笠を脱いでいた手を止めた。
「そうだ。お夕飯作りの前に、ちょっと寄ってもいい?」