第24章 びゐどろの獣✔
「姉上、お顔は痛みませんか? 帰ったらすぐに手当てしましょうね」
「ふふ、ありがとう。でもこれくらいならすぐ治るよ。鬼殺隊本部で丸焦げになった時に比べたら」
「まっ丸焦げ…!?」
「と思ったら違った、手元だけ火傷したんだったなぁはははは」
「…姉上…」
「あははは…は……ごめんなさい」
澄んだ秋空が、茜色へと染まりゆく。
手に手を繋いで帰路につく中、うっかり蛍は口を滑らせた。
咄嗟に笑いに変えてみるも、不安や不満が入り混じる千寿郎の目にすぐに頭を下げた。
「姉上が心配かけまいと思ってくださっていることは、私にもわかっています。でも心配くらいさせてください。家族なんですから」
「…千くんは優しいね」
「それを言うなら兄上の方が」
「うん。杏寿郎も、千くんも、皆優しい」
杏寿郎が蛍を与助の捜索から外したのは、悪鬼となってしまうことを危惧しただけではない。
(多分、童磨のこともあるんだろうな…)
蛍が上弦の弐と出くわしたことも尾を引いているのだろう。
またその手に落ち、行方不明となってしまわないように。
無暗に囮役をさせないのは、きっとその為だ。
「だから何かしたいなって思うの。二人の為に、私は何ができるだろうって。心配させるより、笑顔にさせたいなってよく思う」
「それは…ですが…」
「うん。そうやって気にかけて貰えるのも、嬉しかったりするんだけど、ね」
嬉しいことを共有し合うことも。
辛いことを肩代わりし合うことも。
一人ではなく、二人だからこそできることだ。
そんなふうに寄り添って共に歩いていけることが幸せなのだと。その幸福を形にするようにはにかむ蛍に、千寿郎も頬を緩ませた。