第6章 柱たちとお泊まり会✔
「そうか。それは手間をかけたな、申し訳ない」
「何故お前が謝る」
「厠の場所をもっとわかり易く設置すべきだった」
対して杏寿郎の素直過ぎる受け入れには罪悪感が湧いてしまう。
何か言いたげに蛍が口を開くも、その隙を与えず義勇が部屋へと踏み入れた。
「ぎ、ぎゆ…さ」
「静かにしろ。周りが起きる」
室内では更に声を上げられない。
それでも小声で蛍が呼べば、端的な義勇の言葉に黙らされた。
自分達が寝ていた布団まで赴くと、今度は端を片手で持ちずりずりと引き離し始める。
後をついて来た杏寿郎が不思議そうに見守る中、引いた布団を壁際まで持ってくるとようやく足が止まった。
「ここで寝ろ」
「え」
布団の上に下ろされたかと思えば、更に端的に告げられる。
理由を目で問い掛けても、義勇はそれ以上蛍に何も答えをくれなかった。
(もしかして…気を遣ってくれてるの、かな)
人に囲まれて寝るのは、まだ慣れない。
それとも飢餓症状が出たばかりの蛍を、柱達の間で寝させられないと思ったのか。
どちらにせよ蛍にも都合は良かった。
ちょこんと布団の隅に蛍が座れば、しかし義勇は布団へと足を進めない。
壁に背を預け布団の横に座るとそのまま目を瞑ってしまった。
(えっまさかその格好で寝るつもり…っ?)
幾ら相手が柱とは言え、そんな格好で寝れば体も痛むだろう。
「あの…おふとん、つかっていい、よ」
「お前が使え。俺はここでいい」
「でも…」
「忘れるな。俺の務めはお前を見張ることだ。わかったら早く寝ろ」
義勇の意見は確かに正しい。
反論する隙もなく、仕方なしにと蛍は敷布団の隅で小さく丸まった。
「…わたし、かけぶとんはいらないから。それだけでも、つかって」
義勇の羽織が十分布団代わりになる為、丸まってしまえばすっぽりと仔猫のように収まってしまう。
こんもりと小さな羽織の塊を作り引っ込んでしまった蛍に、まじまじと目を向けていた義勇はやがて諦めと共に布団を掴んだ。
「──…ふむ」
そんな一人と一鬼のやり取りを見守っていた杏寿郎が、己の顎に手をかけて頷く。
かと思えば踵を返し己の布団一式に向かった。