第24章 びゐどろの獣✔
「え…不死川?…なんで此処に」
どこからどう見ても目の前に立っているのは風柱である不死川実弥だ。
杏寿郎に背負われた形のまま、その背中から蛍が顔を覗かせた。
「なんだァそのふざけた格好は。鬼を背負って町中を走るなんざ気でも狂ってんのかァ」
「これは蛍が抹茶を飲んで体調を崩した為、背負い帰ると俺が申し出たまでの結果だ! それより不死川は何故此処に? 君の担当地区ではないだろう!」
「お前が俺に手紙を寄越したからだろうがァ! 忘れんなクソがァ!!」
「むう!?」
「ひ、人に向かって手紙を投げない!」
「煩ェ! テメェも鬼なら抹茶なんざ飲むな血だけ飲んでろォ!!」
笑顔で問う杏寿郎に、懐から取り出した手紙を投げつける実弥。
目の前に立っていたものだから、避ける暇もなくべしん!と杏寿郎の目元に叩き付けられた。
目の前の光景に慌てて蛍が口を開けば、くわっと嚙み殺すような勢いで殺気立った目を向けられる。
どうやら風柱の機嫌は悪いらしい。
「手紙?──ああ、あれか!」
思い当たる節はあったのか、目元に手紙を貼り付けたまま杏寿郎が頷く。
顔の振りで、ぺりと手紙が剥がれ落ちた。
「あれか、じゃねェよ! それで何処だ玄弥は!」
「玄弥…くん?」
「玄弥、少年?」
「揃えて頸捻ってんじゃねェ! 手紙に書いてんだろうが!!」
「んぐ!?」
「ひ、人の顔に手紙を押し付けない!」
「煩ェ目ん玉かっ開いてよく読め!!」
同じ方向にそっくり頸を傾げる二人に、額に血管を浮かせた実弥が光の速さで開いた手紙の文面を杏寿郎の顔に押し付ける。
「ふぇんやひょうへんほほほはほ、ふぉれはふぁいてはいほ!」
「ァあ?」
「ふぇんやひょうへんほほほはほ、」
「何言ってんだ日本語喋れや!」
「ならその手紙を離せばいいと思うハイ!」
杏寿郎の両腕は、背負う蛍の脚を担いでいるのだ。
使えない両手の代わりに、蛍が背後から実弥の手を引き剥がした。
ついでに手紙の文面へと目を走らせる。