第6章 柱たちとお泊まり会✔
「これは適当に干しておく。戻るぞ」
「あ、うん。…しょ、」
もそりと立ち上がれば、着物の時以上に羽織はまとまり難い。
どうにか不格好にも抱えながら、素足でぺたりと蛍は廊下を進んだ。
まるで足だけ伸びた半柄ダルマのような格好に、義勇も思わず口を閉じる。
ひょこひょこと跛を引き摺っているのは、怪我の名残だと言っていた。
まだ完治していないのは治りが遅い所為か、己の体を喰らった所為か。中々進まない小さな歩幅に、溜息を一つ。
「遅い」
「わっ」
ふわりと蛍の体が浮く。
敷布団の上で義勇に帯を掴み上げられた時と同じく、その手によって小さな体は宙に浮いた。
むんずと掴まれたのは胴体ごと。
掴み上げると言うより担ぐように、義勇は脇に抱えて廊下を進む。
(こ…米袋みたいに担がれてしまった…)
ぷらぷらと両手両足が下がり揺れるが、文句など言えやしない。
ちらりと目線を上げて見れば、一切こちらを見ない義勇の斜め下からの顔が見える。
視線は合わない。
なのに見えているかのように前を向いたまま義勇は口を開いた。
「此処に煩く口を出す宇髄はいない。なのに何故まだその姿でいる」
「…こっちのほうが、ちのしょうどうがすくなくて…」
「飢餓症状のことか」
「…うん」
「それは自分の血でも、飲めば治まるのか」
「…すこしだけ。まったくなくならないわけじゃないけど、のどはうるおう。…しょくよくも、なくなる」
己の血肉によるものだけではない。
亡き姉への強い罪悪感で、許されない過ちを思い出すからだ。
「腕の怪我は」
「まだなおってないけど、ちはとまった。あの…ほうたい、ありがとう」
「自分の体質を理解しているなら常備しておけ。血を垂れ流していると、他の柱に誰かを喰ったと勘違いされるぞ」
「う、うん。きをつけ、ます」
腕の傷跡は、一先ず義勇の包帯で止血することはできた。
肝に命じようと思いながら、尚も蛍の目はまじまじと義勇を見上げ続ける。
(…会話、できてる…)