第24章 びゐどろの獣✔
(え、なんで。これ、いつから…っ)
いつから破り捨てられていたのか。
杏寿郎達は知っているのか。
もし知らないのであれば、報告した方がいいのか。
しかしこんなにも悲惨な状態の炎柱ノ書を持っていけば、自分がやったと思われないだろうか。
不安と緊張で、本を両手で握ったまま狼狽えてしまう。
「ど、どうしよう…っ」
「何がだ?」
「ひゃわぁ!?」
おろおろと右往左往する蛍の背後に飛んできたのは、緊張感など皆無の呼び声。
先程の比ではない程、蛍は蛙のように飛び上がった。
「き、きっ杏寿郎…び、吃驚した…っ」
「…俺も驚いたが」
振り返れば、先程と同じ袴姿で廊下に立つ杏寿郎がこちらを見ている。
先程と違うことと言えば、たすき掛けの紐を解いていることくらいだろうか。
その目は蛍の声と跳躍に更に見開き、丸くなっていた。
「茶を運ぶことくらいなら手を出しても構わないだろうと、迎えに来たんだが……その本は…」
告げる杏寿郎の目が、蛍の顔から胸に抱いた本へと移る。
表紙が見えるように抱いていたことにはっとした蛍は、勢いのまま頭を下げた。
「ごめんなさい! 何もしてません!」
「む?」
「な、中は開いたけど…っでも読んでないから…読めなかったし…っあ、でも開いただけでっ」
「落ち着け、蛍。それは炎柱の書だな」
「う、うん。ごめんなさい」
「何故謝る?」
「勝手に、取り出してしまって…偶々見つけたというか…大分年季が入ってるみたいだし、虫干しした方がいいのかなと思って…」
「うむ。その判断は可笑しくはないぞ。我が家の本棚を蛍に頼んだのは俺達だ。俺も千寿郎も、その本がここに置いてあることは知っている」
「そう、なの…? でも隠し扉みたいなところに置かれていたから、てっきり見つけたら駄目なのかと」
「はははっ隠し扉か、確かにな。おいそれと他者の目に見つからないように保管していたのは確かだ。よく見つけた」
気さくに笑う杏寿郎に、そこまで構える必要はなかったのかとほっと息を整えた。
それでも問題はまだ残っている。
見るも無残に破かれた本の中身だ。