第6章 柱たちとお泊まり会✔
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月明かりの下、廊下を足音もなく進む。
厠へと続く道を義勇は一人歩いていた。
一睡もできずにいた蛍のことは知っていた。
しかし気には掛けても構う必要はないと事を見守っていたが、どうにも厠へ出たきり帰りが遅い。
しのぶと交わした言葉の所為か、はたまた別の何かが理由か。
考えても答えなど出ないことを悩む気もなく、仕方ないとばかりに腰を上げた。
『何処に行かれるんですか? 冨岡さん』
『……』
『まさかあの鬼を追うつもりですか?』
『…だったらなんだ』
『見た目はあれでも彼女は大人です。迷子の子供じゃあるまいし』
『その言葉通りならいい加減戻ってきてもいいはずだ』
『そうですか? 女性のお手洗いですよ。そこに顔を突っ込む方が野暮かと』
部屋を出る際にしのぶに小言を言われたが、適当に流して部屋を後にした。
売り言葉に買い言葉をしていては、いつまで経っても蛍を追えない。
女の手洗いだと気遣う程の立場でもないし、大人だから平気だと放置する程の関係性でもない。
天元に蛍の番犬だと言われたのは気に喰わなかったが、自分が見張ると言ったからには放っておくことはできないのだ。
これは義務だと半ば自分に言い聞かせながら、背中を追うしのぶの声を無視して足を進めた。
目を向けていたのは消えた蛍の背中だけだ。
だから気付かなかった。
『全く…宇髄さんの言う通り、鬼に張り付く警察犬みたいですね』
『……』
『──ねぇ、煉獄さん』
溜息混じりに振り返ったしのぶの目に映る。
暗闇に浮かぶ炎のような強い双眸が、こちらを向いていたことを。