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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第6章 柱たちとお泊まり会✔



❉  ❉  ❉

 月明かりの下、廊下を足音もなく進む。
 厠へと続く道を義勇は一人歩いていた。

 一睡もできずにいた蛍のことは知っていた。
 しかし気には掛けても構う必要はないと事を見守っていたが、どうにも厠へ出たきり帰りが遅い。
 しのぶと交わした言葉の所為か、はたまた別の何かが理由か。
 考えても答えなど出ないことを悩む気もなく、仕方ないとばかりに腰を上げた。




『何処に行かれるんですか? 冨岡さん』

『……』

『まさかあの鬼を追うつもりですか?』

『…だったらなんだ』

『見た目はあれでも彼女は大人です。迷子の子供じゃあるまいし』

『その言葉通りならいい加減戻ってきてもいいはずだ』

『そうですか? 女性のお手洗いですよ。そこに顔を突っ込む方が野暮かと』




 部屋を出る際にしのぶに小言を言われたが、適当に流して部屋を後にした。
 売り言葉に買い言葉をしていては、いつまで経っても蛍を追えない。

 女の手洗いだと気遣う程の立場でもないし、大人だから平気だと放置する程の関係性でもない。
 天元に蛍の番犬だと言われたのは気に喰わなかったが、自分が見張ると言ったからには放っておくことはできないのだ。
 これは義務だと半ば自分に言い聞かせながら、背中を追うしのぶの声を無視して足を進めた。

 目を向けていたのは消えた蛍の背中だけだ。
 だから気付かなかった。




『全く…宇髄さんの言う通り、鬼に張り付く警察犬みたいですね』

『……』

『──ねぇ、煉獄さん』




 溜息混じりに振り返ったしのぶの目に映る。
 暗闇に浮かぶ炎のような強い双眸が、こちらを向いていたことを。

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