第23章 もの思へば 沢の蛍も 我が身より✔
「柚霧…顔を見せてくれ。君の顔が見たい」
促されるまま、頸を捻り振り返る。
柚霧のその唇を塞ぐまで、瞬き一つとかからなかった。
「ん…っ」
触れられずにはいられないと、熱く舌の愛撫を重ねる。
「ふ、は…っ」
「は…っただし、柚霧も体の変化を俺にちゃんと教えてくれ。無理強いはしたくない」
「は、い。…あ、待って、杏寿郎さ…っ」
「待ては聞かないぞ」
「いえ、あの…っちゃんと、受け入れる準備を、したくて」
ふっくらと柔らかな尻を撫でる手が、小さな蕾へと向かう様に柚霧はぴくりと体を張った。
慌ててその手首を握ると、違うと頸を横に振る。
「前に、約束したでしょう。今度ここを…愛して、もらう時は、私が準備をします」
煉獄家の庭で交わした約束だ。
杏寿郎の記憶にも印象深く残っていたものだった為に、ぴたりと責めの手が止まる。
「そうか…そうだったな。すまん、俺の知識が浅いばかりに、柚霧に任せてしまうことになるとは…」
「いいえ。寧ろ杏寿郎さんの知識が豊富な方が、私が妬いてしまいます。杏寿郎さんは、今のままでいて下さい」
申し訳なさそうに下がる太い眉を見ながら、柚霧は愛おしげに頬を緩めた。
「では少しの間、後ろを向いていてもらえますか?」
「ふむ? ああ、わかった」
「ありがとうございます」
ゆるりと膝から下りる柚霧に、頷き布団の上で胡坐を掻いたまま背を向ける。
「待て柚霧」
「はい?」
かと思いきや、ぐりんと杏寿郎は再び回り戻った。
「何故後ろを向く必要がある? 準備をするのだろう?」
「え、ええはい…だから、あっちを向いていて欲しいと…」
「何故だ」
「え」
「今回は致し方ないが、本来なら柚霧を抱く側の俺が知っていて然るべきことだ。俺にも見せて欲しい」
「え…っいや、それは」
「君の体なら隅から隅まで知っている。今更隠すこともないだろう?」
「そ、そういう問題でも…心は別ですッ」
「というと?」
「そんな恥ずかしい姿…っ」
「成程、羞恥に感じることなのか」
「っ」
「ならば尚更捨て置けないな」