第6章 柱たちとお泊まり会✔
喉がひりつく。
乾いた喉奥が張り付きそうなのに、唾液が溢れ出そうな真逆の感覚がした。
「お前らしっかり寝ろよー」
「ふふっ皆でお布団を並べて寝るなんて初めてだわ…っどきどきしちゃう」
「そうだな甘露寺! 俺も楽しい!!」
「楽しいことは何よりだが煉獄、寝るなら静かに頼む。貴重な睡眠時間だ」
「そうですね。理由はなんであれ折角頂けたお休み時間ですし。私もゆっくり寝させてもらいます」
天元の声かけにより今度こそ灯りは全て消された。
子供のようにはしゃいでいた蜜璃ちゃんも杏寿郎も、部屋が暗闇に包まれると自然と静かになる。
伊黒小芭内や胡蝶しのぶの言う通り、鬼殺隊の柱にとって特に睡眠は日頃取れないものなんだろう。
二人はどうであれ、蜜璃ちゃんと杏寿郎が休めるなら私も嬉しいところだけど…。
「……」
一言も発さず無言で布団に入る冨岡義勇に、意を決して私も同じ布団に潜り込んだ。
なるべく触れないようにとぎりぎり隅に入り込めば、何故か先程のように羽交い締めにはされなかった。
ちらりと一度だけ私を見た後、背を向けられたからどんなにほっとしたことか。
それでも布団の隅っこで小さくなった体を尚更縮ませて、極力冨岡義勇から離れるようにした。
でないと、喉が、乾いてしまって。
人の気配を極力感じないようにと、布団の中に頭も入れてすっぽり潜り込む。
だけどそれはそれで、同じ空間にいる冨岡義勇の血脈の音や微かな体温を感じてしまって落ち着かなかった。
人であった時ならば、きっと安心できたはずの他人の温もりだ。
なのに鬼と成ってしまってからは、感じるはずのない微かな音や色を拾うようになった。
感じるはずのない空腹を覚えるようになった。
…兆候はあったんだ。
胡蝶しのぶに打たれた全身麻酔が切れ始めた頃から。
天元の奥さん達に看て貰いながら、段々と体が完治に向かうにつれて感じていた焦燥。喉の乾き。空腹。
この目が追うものは全て、周りにいる奥さん達の肌や四肢などの体の部位。
若くて熟したその柔らかい体に"食欲"を感じていたんだ。
まだ微かなものだったから、昼間は必死でその欲から目を逸らし続けた。
体を大半失ったんだから血肉を求めても不思議じゃない。
いつもは理性で押し込められている飢餓がまたやってきたんだろう。