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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第6章 柱たちとお泊まり会✔



「どうだ? 彩千代少女」


 安心する猩々緋色。
 体を囲う腕は太く、布越しに感じるものでも屈強なのに圧はない。
 背に触れた大きな掌も、座る尻の下で支えてくれる腕も、そこにあるべきもののようにすとんと腑に落ちる。

 杏寿郎にこんなふうに抱き上げられたのは初めてなのに。
 杏寿郎の腕の中にいるんだと実感すると、ほんの少し体の力が抜けた。
 こくりと頷き返せば、うむ!と笑って返してくれる。


「来て早々悪いが悲鳴嶼殿、胡蝶に用事があるなら二人で済ませては貰えないですか。一応これも休息稽古なので我々は寝なければならない!」

「休息稽古とは、どのような稽古なんだ…?」

「む! 悲鳴嶼殿も興味が!? しかしもう布団はないので! 申し訳ない!」

「そうか…それは残念だ…」


 え…それって、布団があったら参加する気だったの…。
 なんでこう、鬼殺隊なのに柱の人達って鬼の私といて平気なの…というかわちゃりたがるの。

 娯楽? 娯楽がないのかな?
 鬼ばかり狩る集団だから娯楽に飢えてるのかなきっとそうだ。

 杏寿郎の言葉に素直に身を退く悲鳴嶼行冥に、ほっと息をつく。
 改めて杏寿郎を見れば、じっとその目も私を見つめていた。
 なんだろう?


「…彩千代少女」

「?」

「君が構わないなら…やはり、俺の布団で寝るのはどうだろうか」


 思わぬ提案に、ぱちりと目が瞬く。


「これは稽古でもあるが、休むことが先決だ。今の君は何かと休めていない感じがする。…俺の隣でも休息となるなら、君の為に寝床を作ろう」


 まるで心の内を読んでるみたいに、私が欲しい言葉をくれる。
 杏寿郎の隣でも、じゃない。
 杏寿郎の隣だから、安心できるんだ。

 迷う必要なんてない。
 思わず前のめりに体が傾いて、大きく頸を縦に振──


「……」

「…どうした?」

「…っ」


 強く掴んでいた杏寿郎の浴衣の裾を、ゆっくりと離す。
 …駄目、だ。

 いたい。
 杏寿郎の隣に、いたい。
 でも、駄目だ。


「わ、たしは…だいじょうぶ」


 いたいけど、いられない。
 だって。


「これも、くんれん、だから。あまえなくても、やすめられるように、する」


 だって。

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