第6章 柱たちとお泊まり会✔
「……」
じっと光の見えない白い眼で見下される。
天元を遥かに上回る体格だから、私と私を抱いた杏寿郎もすっぽりと影で覆ってしまう程だ。
…こ、怖い。
「これが例の鬼の子か…」
ジャリ、と数珠を摺り合わせて、悲鳴嶼行冥と呼ばれた男が頭(こうべ)を垂れる。
「こんなにも幼き歳で、鬼と成り果ててしまうとは…嗚呼…可哀想に…」
「確かに彩千代少女は鬼としても若い女子(おなご)に入る部類でしょうが、見た目程の年齢ではないです。今はそう見せているだけで」
「そう、とは…?」
「チビになってるってだけっスよ。鬼は体を好きに変化させられるんで」
「なんと面妖な…」
天元の説明に、またもやじぃっと白い眼が見下ろしてくる。
冨岡義勇とはまた違う、全く感情の読めない瞳。
感情が読めないんじゃなくて、そこには感情が"ない"んだ。
目は口程に語るとか言うけれど、この男の眼にはその心が全く浮かんでいない。
唯一感じ取れたのは、巨体から微かに伝わってくる"色"。
静かな声に感情の起伏も激しくなく、哀れむ言葉を向けられる。
今まで会った柱の中で、一番害がないように見えるけれど…その屈強な肌に静かに纏っている色は、鉄黒色(てつぐろいろ)。
黒に近いどっしりと重い色が、激しい主張はせず微かにこの男の体の輪郭の線をぎりぎり纏っている。
怖い。
上手く言えないけれど、多分、私なんかでは手の届かないところにある強さを持っている気がする。
上手くは、言えないけれど。
「……」
手の内側に汗を搔く。
無意識に杏寿郎の浴衣を強く握り締めていた。
ぽふん、と大きな掌に背を優しく叩かれたのは、その時だ。
「静と動の訓練で、些か疲れてしまったようだ。そろそろ本物の休息を取ろうか」
そう呼び掛けてくれたのは杏寿郎だった。
いつもと変わらない表情で、真っ直ぐに私を見て呼び掛けてくれる。