第22章 花いちもんめ✔
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「合流セヨ! 蛍ハマダカ!? トノオ達シダ!」
「まだだ! 宇髄には現状維持、俺が戻るまで待機と伝えてくれ!」
「カァ! ソレカラドンダケ時間過ギテンダヨ! トノオ達シダァ!!」
「本当に宇髄がそれを言ったのか? 君ではなく?」
「ソウダ! 男ノ尋問ハモウ始メテンゾ!」
「そうか。手間をかけさせてすまないと謝っておいてくれ!」
「ソレクライ自分デ伝エロ! 合流スルマデ俺ハオ前カラ離レネェゾ!!」
煌びやかな建物が並ぶ屋根の上を、焔色の髪を靡かせ風のように走る。
杏寿郎に遅れを取ることなくぴたりと傍について飛ぶ鎹鴉は、鬼殺隊一の俊足を誇る天元の相方──虹丸だった。
「それは構わないが! ならまだ戻れないぞ!」
「アノ小鬼カァ!?」
「探索の手をここで止める訳にはいかない!」
常に顔に貼り付いているようないつもの笑顔はなく、鋭い眼孔は人混みの中へと向いている。
「鬼ナラ鬼ニ襲ワレル心配ハナイダロ! 何処カデ道草食ッテンジャネェノカ!」
「蛍はそんな鬼ではない! 鬼同士での共食いも最悪あり得る! そもそも襲う相手も鬼だけとは限らない!」
「ドウイウ意味ダソリャア!?」
屋根から屋根へと飛躍する。
虹丸に返す言葉もなく、杏寿郎は険しい表情を浮かべた。
洗濯をしていた双子のような少女が語っていた、青いべべとリボンの少女。
それは金髪の異邦人に抱かれていたという。
(それが本当に蛍なら、見知らぬ男に攫(さら)われたということだ)
杏寿郎の記憶では金髪の者は、煉獄家を除いて鬼殺隊内では新人剣士の我妻善逸という少年しか該当しない。
男ではなく、少年なのだ。
故に少女達の言っていた異邦人とは異なる。
何より鬼である蛍が、人攫いに合うことなど考え難い出来事である。
しかしそれが今正に自分達が追っている"神隠し"であるとすれば、可能性も浮上してくる。
少女達も偶々通りかかった所を見ていただけらしく、詳しい情報はそれ以上引き出せなかった。
男は蛍を抱えて何処へ消えたというのか。
明るい表通りも暗い裏通りも隅々まで捜したというのに、見つからない。