第6章 柱たちとお泊まり会✔
──ふっ
胡蝶しのぶの口元の蝋燭の炎が、空気に溶けるように消える。
「これで私の話は終わりです」
話し始めと変わらない雰囲気で伝える彼女に、返す周りの空気は重い。
重いというか、沈黙が重いというか。
なんだか背中にひんやりとしたものを感じた。
隊士から聞いた話ってことは…本当に、あったこと?
「…その岸田って奴はどうなったんだよ」
「さぁ。岸田さんご本人から聞いた話ではないので。それに彼は大分昔に、鬼殺隊を辞められたそうですよ」
「辞めた理由はなんだ?」
「さぁ。それも知りません」
「佐本という男はどうなった」
「さぁ」
矢継ぎ早に問い掛ける天元と杏寿郎と伊黒小芭内に、胡蝶しのぶは「さぁ」の一点張り。
話の最後も曖昧で、それがその岸田という男の生存も曖昧にさせているから後味が悪く、薄気味悪い。
「ま、まぁ! ようやく怪談らしくなってきたってことだな!」
その空気を切り替えるように明るい声を出したのは天元だった。
怪談らしくというか、一気にそんな空気まで下がったというか…首筋がひんやりする。
胡蝶しのぶの語りが怖かったのか、それとも内容が怖かったのか。
それでも目の前の蝋燭を消してしまうまでには至らなかったから、よかったけど。
というか聞き入ってしまってたから悲鳴も何も──
パキッ
音がした。
小枝を踏んだような、そんな音。
パキリ、
音がしたのは襖の向こう側だった。
此処は一階。
襖の向こうは廊下があって、更にその先は煉獄邸の広い庭。
月が照らす外の方が明るい為に、それは私達のいる部屋へと伸びていた。
見知らぬ、ぼんやりと形を作った人影が。
気配なんてしなかった。
一斉に息を呑む私達の前で、知らぬ間に襖を隔てた外に立つ影が野太い声で言ったのだ。
『おひぃだぁ』