第22章 花いちもんめ✔
「これはとっておきだから喰べずに保管していたけど、蛍ちゃんになら使ってもいいかな」
きゅぽんとコルク栓を抜くと、掌に転がし出したのは綺麗な氷の結晶だった。
宝石のようにきらきらと輝くそれは一見、天元の額当ての飾りの宝石にも似ていたが、決定的に違うところが一つ。
「な…何、それ…」
赤黒い。
深みのあるルビーのようにも見えるそれは、血液の結晶だった。
「とっておきだよ。はい、あーん♪」
「っ!?」
いきなりそれを目の前に突き出されるものだから、蛍は反射で強く唇を結んだ。
「大丈夫、毒なんかじゃないよ~。美味しい人間の血だから」
「っ!」
「えー要らないの? こんなに極上の血は滅多に味わえないんだけどなあ…」
ぶんぶんと頸を横に振る蛍に、どうしたものかと考えあぐねる。
それも束の間、童磨の中で答えは一秒で決まった。
「これでも俺、上弦なんだぜ。格上(うえ)の者の命令は聞かなきゃいけないよ」
長い童磨の指が、すり、と蛍の顎を撫でる。
そっと包むように握ったかと思えば、唐突にミシリと軋む音を立てた。
「う"…ッ」
「ほうら、口を開けて」
「ぐ、う」
骨に罅が入るのではないかと思うくらいの、強い力だった。
ギシギシと軋む音を立てながら、顎を鷲掴まれた手で無理矢理に上顎と下顎の関節を開かされる。
れろんと己の舌で血の結晶を絡め取ると、童磨は少しだけ開いた蛍の口の隙間にそれを差し込んだ。
「暴れたら、顎を砕いてしまうかもしれないから。大人しくしててね」
「っん、ッ…う"ッ!?」
深く重なり合う唇に、冷たい舌が口内に捻じ込まれる。
それだけなら慣れたはずのものだったが、突如として蛍の目は見開いた。
「んん"…ッぐ、ふッ」
まるで蛇のように、ずるりと伸びた童磨の舌が蛍の喉仏を擦り奥まで潜り込んできたのだ。
喉を詰まらせる感覚と強い嘔吐感に、幼い四肢が暴れもがく。
その抵抗も赤子のようだと抱き込んだまま、童磨は尚も蛍の喉奥を犯した。