第22章 花いちもんめ✔
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肌を刺すような冷えた空気。
それでもじんわりと体内から感じるような熱に、蛍は幼い唇を震わせた。
「っ…ぅ…」
「そんなに声を抑えなくたっていいんだよ。だぁれも聞いていないから」
「……の…?」
「ん?」
「こんな、子供の体をまさぐって、楽しいの?」
「うん。愉しいよ」
解かれた帯に、崩れた着物から覗く幼い肌。
その肌をまさぐる童磨の手は、鋭い爪を持っていながらも優しく愛撫を繰り返していた。
少女特有の小さな胸の膨らみを包むように揉まれ、細い脚の付け根を這うように撫でられる。
幼い体だと抗いも十分にはできないが、ここで擬態を解いて大人に戻ってしまえば、子供用の着物では隠せるところも隠せなくなってしまう。
あっさりと笑顔で頷く童磨をせめてもと睨み付ければ、更に虹色の瞳を細めて笑い返された。
「いいなあ、その顔。幼さに似つかわしく無い感じが、余計にそそる」
「っ…変人」
「あはは! そうかなあ? そんな俺の手で感じちゃっている蛍ちゃんも、変人じゃないのかな? あ、この場合は変鬼かな」
「ッ」
「口よりこっちの方が正直だね。やっぱり、男を知っている身体だ」
熟してもいない胸の花の芽をきゅっと摘ままれると、ひくんと体が反応を示す。
狭い個人車両の寝台の中で、杏寿郎に幼い体を抱かれた時のことを思い出すように。
(…っ違う)
相手は杏寿郎ではない。
始終優しい声をかけながら、感情のこもっていないような目で見てくるこの鬼の男は、彼とは似ても似つかない。
寧ろ柚霧を組み敷き、私利私欲で抱いてきた男達と似ていた。
触れられる度に体が震えるのは、熱に浮かされるからではなく寒気を感じるからだ。
「っ…あんた達は、いつもそう」
「たち?」
「お金さえ払えば何をしてもいいと思ってる。自分が気持ちよくなれば、相手もそうだと勝手に決めつける。目の前にいる女のことなんて見ていない」
「…なんのことかな?」
「結局、人間も鬼も、そこに違いなんてない」
きょとんと頸を傾げる童磨を睨み付け、蛍は冷たく吐き捨てた。
「体なんて好きにすればいい。心まで触らせるつもりはないから」