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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第22章 花いちもんめ✔



「それなら蛍ちゃんも経験あるだろうけど、無残様とは心通(しんつう)で会話をしたんだ。無惨様自ら俺達の前に姿を現すのは稀だからね。偶に頂く命令も、ほとんどが心通でくるものばかりだし」

「つまり、心を通わせる的な…?」

「そんな感じかなあ。あれ、経験ないのかい?」

「…ないことも、ないかも…」

「ふぅん?」

「あんまり憶えてなくて…無惨様、と会話したのは、初めて出会った時だけだったし…」

「そうなんだ。まあ、そういうことはよくあるよね。猗窩座(あかざ)殿だって人間の頃の記憶は全くないって言うし」

「あかざ…?」

「知らないかい? 上弦の鬼なんだけれど」

「!」


 上弦の鬼。
 無惨の次に実力を持つ鬼の名称に、蛍は驚きを隠せなかった。
 その上弦を慣れ親しむように呼ぶ童磨は、一体何者なのか。


「童磨は、上弦の鬼…様を、知ってるの?」

「ああ。なんせ猗窩座殿は俺の一番の友人だからね!」


 にっこりと笑顔で言い切る童磨は、やはり嘘で取り繕っているような気配はない。

 上弦を目上の者と敬わず、友と呼ぶとは。
 鬼には人間のような序列関係はないのか。
 一つだけ言うならば、妓夫太郎と堕姫のように、兄妹としての絆を作れることは知っている。

 だとしたら童磨は上弦の鬼と友好関係を作ることのできた鬼なのか。


(これは好機かもしれない)


 上弦の、無惨の、その懐に飛び込む一歩として。
 蛍は縋るように童磨の服を小さな手で握っていた。


「ど…童磨、」

「うん?」

「私、無惨様や、上弦の鬼様のこと、知りたい。…会いたいって言ったら、会わせてもらえる?」

「ええ? どうかなあ…無惨様は俺達の希望ではまず会えないし。あの方から赴くのを待たないと」

「そう、なの?」

「うん、残念だけど。でももう一つの願いなら叶えてあげられるよ」

「えっ」

「上弦の鬼に会いたいんだろう? 簡単だよ」

「本当っ?」


 思わず声が弾む。
 蛍の喜び様に、童磨も嬉しそうに笑顔を返した。


「だってもう会ってるじゃないか」

「……え?」


 穏やかに眉尻を下げたまま笑う瞳が、揺らぎ光る。
 虹色のような煌めきの中に、浮上するようにそれは浮かび上がった。










「俺もその上弦なんだぜ」

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