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いろはに鬼と ちりぬるを【鬼滅の刃】

第22章 花いちもんめ✔



 おぼことは──まだ世慣れていない、幼い生娘のことを言う。

 若い娘が狙われている今回の事件らしきもの。
 標的をあぶり出す為におぼこのような娘を使う理由は、よくわかる。

 わかるが。


「納得はいかないッ!!」

「うおッ煉獄お前声デケェっつの…鼓膜破く気かよ」

「俺は!!納得がいかないと言ったんだ!!」

「だぁから聞こえてんだって! お前が納得いこうがいくまいが諦めろ、ここまでの適任者はいねぇ」

「え…と」

「なぁ千坊」


 とある一室。
 にっこりと笑いかける天元の前には、愛らしい桃色と白の市松文様のべべを着た幼子が一人。
 明るい焔色の髪をふんわりと下ろし、後頭部には同じ市松文様の大きなリボン。
 化粧は一切していないが、いつもは反り返っている前髪を下ろせば主張の強い太い眉も隠れてしまう。
 ぱっちりと大きな瞳に目尻の先の睫毛は長く、細い手足は少女と見間違えても可笑しくはない。

 見事に天元に着せ替えられたおぼこ姿の千寿郎が、其処に立っていた。


「いえ私も納得がいきません」

「あ? なんだ蛍まで」

「私が幼子に変化すればいいだけの話でしょ。私一人で囮(おとり)役は十分できるはずだけど」


 ジト目で挙手する蛍もまた、渡されたべべを着込んでいた。
 千寿郎とは色違いの、空色と白の市松文様のべべに、市松文様のリボンをハーフアップにした後頭部に飾っている。
 その姿は齢十二、三程の少女。

 自分がいれば千寿郎の囮役は不要ではないのか。
 尤もな意見を向ける蛍に、あっけらかんと天元は一言。


「お前は生娘に見えねぇ」

「み…ッ」


 がん!と頭に岩でも降ってきたような衝撃を受ける蛍は、瞬く間に撃沈してしまった。


「なんつーか、着飾れば着飾る程お前は色気出てくるんだよな…そんなちんちくりんの体してんのに。芸者でもやってたか?」

「っ…ちんちくりん言うな…」

「あ、姉上気を確かに…っその、よく似合ってますよ」

「千くん…その誉め言葉が今は複雑です…」

「えっ」

「蛍はちんちくりんではない! 玉のような体をしているだけだ!」

「…たま…」

「その言葉にも蛍が負傷してんぞ、煉獄」

「むッ!?」

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