第22章 花いちもんめ✔
公になっていないのならば、やはり与助の居場所を突き止める必要がある。
罪の責任を取ってもらう為にも。
「はいはい。感動の再会のところ悪いけど、東屋の旦那には仕事を持ってきたんだよ」
「おうよ、何か入用で?」
「今回は品物じゃなくて、"あっち"の方さね」
パンパンと手を叩き仕切り直す松風の説明は、具体的ではなかったが東屋には伝わった。
蛍から身を離すと、何が欲しいのかと尋ねる。
「もしかしてそこの見かけない旦那方の依頼かい?」
「うむ。与助という、月房屋で働いていた男を捜している。つい先日、駒澤村で見かけたのだが行方を見失ってしまった。それらしい情報をお持ちではないだろうか」
「与助? あの男が生きてたのか?」
「らしいね。柚霧もそう言うんだ、間違いないと思うよ」
「与助か…そいつの情報は聞いちゃいないが…不審な男の情報なら一つ入ってる」
「本当ですか」
興味を示す蛍に、東屋は手にした情報を話した。
ここ最近、若い女ばかりに声をかける男がいるらしい。
その男の奇妙なところは、この時代には珍しい手持ちの写真機、所謂カメラを所持していること。
そのカメラで一枚写真を撮らせて欲しい、ということと、名前を教えて欲しい、と訊いてくるのだそうだ。
「写真に名前…なんだい、女郎のプロマイドでも作ろうってのかね」
「ぷろまいど?」
「芸事役者の写真なんか売ってたりするだろ。あれと同じもんさ」
「勿論、気味悪がって断る女も多いんだが、口の上手い優男のようで、乗っちまう女もいるんだとか」
「でも、写真を撮るだけなんですよね? 他に何かする訳じゃ…」
「それだけならまだいい」
「他に何か問題が?」
蛍に続けて問いかける杏寿郎に、東屋は眉をひそめて声を落とした。
「その後、写真を撮られた女の中に消息を絶つ者が出てきたらしいんだと」
「ふむ。消息を絶つ、か…どれ程の女性が被害に?」
「具体的な数はわかっちゃいねぇな。風の噂のようなもんだからよ」